アジアのファッションハブへと進化する マカオ 。強い個性が生む新商機【マカオファッションフェスティバル2024レポート】
3. グローバルなファッション都市としての進化
同イベントで近年力を入れているのが、グレーターベイエリアのファッション業界との相互連携だ。マカオとともに同エリアに属する香港、深圳、広州、中山から招いたデザイナーたちによるコレクションショー「Fashion Parade(ファッションパレード)」がMFF2024のオープニングを飾り、イベント会場では、マカオ、香港、深圳、珠海の7つのファッションデザイン教育機関の若手デザイナーたちによるコレクションも展示した。海外から参加したデザイナーたちは、ローカル文化を軸にしながら、グローバル市場での事業拡大を目指す姿が目立った。 廊などでみられる風車や店舗の鉄格子による紋様、ネオンサイン、タクシーといった香港の文化を象徴するモチーフを伝統的なチャイナドレスに取り入れて注目を集めたのが、香港のファッションブランド「Sparkle By Karen Chan」だ。香港の著名書道家とのコラボレーションした草書(Cursive Script)コレクションや、香港で人気のアニメキャラクター「老夫子」との協業を通じ、ウェアラブルアート(着るアート)の可能性を追求している。 香港ならではのカルチャー要素を落とし込んだカレン・チャン氏のコレクション。パワーショルダーやパンツスタイルを取り入れ、デニムやレースなどの素材を採用するなど、チャイナ服にもモダンな解釈を加えている。 デザイナーのカレン・チャン氏は、クリエーションにおけるミックス感覚は、米国やカナダなどでの長期海外経験も影響しているかもしれないと話す。日本の浴衣や着物が日常生活に溶け込んでいる点にも多くインスパイアされているといい、「温泉宿で浴衣を着る体験はとても心地よく、香港でも同じように伝統衣装を日常に取り入れるカルチャーが根づいてほしい」と話す。「フォーマルな場やパーティーだけではなく、通勤でもチャイナドレスを着る姿を見ることができれば」と期待する。 香港最大のファッションイベントのひとつであるセンターステージ(CENTRESTAGE)の常連であり、NYやパリでも作品を発表しているカレン・チャン氏。MFFへの参加について、「香港を代表して作品を発表できるのはとても光栄。グレーターベイエリアのファッションシーンを盛り上げていきたい」とコメントと語った。 フィリピンから参加したのは、ハンズ・コキーラ氏によるウィメンズブランド「Hanz Coquilla Alta Costura」。最新の来春夏コレクションは、フィリピンの伝統衣装テルノからインスピレーションを得た。テルノの大きな特徴である肩部分が大きく張り出したバタフライ・スリーブをデニムのラッフルワンピースやショートジャケット、ツイードのワンピースなどに取り入れた華やかなドレス群だ。 コキーラ氏は、「コレクションのコンセプトはその時々で変わるが、フィリピンの伝統的な文化をデザインに取り入れ、それを若い世代やグローバルな場で発信することは、デザイナーとしての使命だと感じている」と話す。サステナブルな素材を採用するなど環境に配慮したブランド運営にも力を入れている。 ハンズ・コキーラ氏。フランスや米国のファッションイベントにも積極的に参加。日本でもコレクションを披露したことがあるが、いずれは東京のファッションウィークにも参加したいという。 今回のMFFには2017年、2019年に続いて3度目の参加となった。「マカオのデザイナーたちとも交流でき、互いにインスピレーションを受けられる貴重な機会。何より、運営する人々もイベントそのものも素晴らしい」とコキーラ氏は話した。