ポップオペラの貴公子、藤澤ノリマサ ライブ出来ず苦しいコロナ禍に新チャレンジ
“ポップオペラの貴公子”と異名を取り、ポップスとオペラの融合に取り組んできた歌手・藤澤ノリマサ。アニメ『新テニスの王子様』の主題歌『未来の僕らへ』ではサビでベルカント唱法に変わる歌唱が“謎オペラ”と言われたことで知られるが今回はそのポップオペラをひと休み、コロナ禍にあってコロナ禍だからこそ出来たソングライティングに初挑戦したアルバム『La Luce(ラ・ルーチェ)』のリリースを19日に控える藤澤に聞いた。 【写真特集】ライブパフォーマー、藤澤ノリマサ
ライブが出来ないもどかしさと苦しさ
「ライブが出来ないもどかしさと苦しさ、当たり前のことが当たり前じゃなくなって行くこの世の中で、だからこそ曲を書くということにじっくり取り組むことが出来たんですよね。コロナには一刻も早く収束して欲しいのはもちろんですが、コロナになっていなければ『La Luce』は作れなかった。いろいろな意味で今はすごく考えさせられることの多い時間を過ごしています」 窮地を逆手に取るかのような機転で作品づくりにほとんどの時間を注いだ。収録全12曲を松井五郎氏が作詞、藤澤が作曲を担当。9月にはこのアルバムを引っさげて「藤澤ノリマサ La Luceクラシカルコンサート2021」の開催も予定される。やはり本人としてはライブパフォーマーでありたい、というのが一番だとか。 「コロナ禍なのでプロモーションも難しい時期ですが、1年でも2年でも時間をかけてこの作品を広げて行きたいという気持ちです。コロナ以前の生活に近い状態に戻ってコンサートが出来るようになったら、やっぱりそのときはどんなところにでも行って、歌って、届けたいですね。同時にこれまでの“ポップオペラ”も僕の1つの原点なので続けて行きたいですし、いろいろな作品の作り方を模索して行きたいです」
父親はクラシック、母親は歌謡曲という家庭
そのポップオペラだが、ルーツは藤澤の生まれ育った家庭と無縁ではないようだ。藤澤は1983年3月、札幌市の出身。音楽に縁の深い家庭だった。 「両親の影響は大きいですね。父は僕と同じ武蔵野音楽大学で、声楽科を卒業しクラシック音楽が大好き。家にはテノール歌手のレコードが1000枚以上はありました。三大テノール(パヴァロッティ、ドミンゴ、カレーラス)はもちろん、それ以外、もっと前の時代からクラシックの専門家も知らないようなアルバムが置いてありました」 一方で母親は、そんなテノールマニアともいえるような父親と対照的なのだとか。 「母はポップス、それもやや演歌寄りでカラオケ教室の先生もしていたんです。子どもの頃は父の書斎からクラシックが聴こえて、カラオケ教室に行けばこぶしが回った演歌が聴こえてきて。父と母は高校の同級生だったんですが。家にはグランドピアノもあって、小さい頃はピアノの上を走り回って怒られた記憶があります」 小学校3年生のとき地域のカラオケ大会で優勝、人前で歌う喜びを知った。高1のときには『NHKのど自慢』で優勝を飾っている。そのときにはすでにテレビの音楽番組でジュディ・オングをはじめ歌手が歌っている姿を見て自分も将来はステージに立ちたいと思っていたという。 「高1のときちょうど1998年だったのですが、夏にカナダに1ヵ月間短期留学をしたとき映画『タイタニック』とセリーヌ・ディオンが歌う主題歌『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』が大ヒットしていたんです。それから洋楽が好きになって、“ポップオペラ”のポップの部分が自分の中に根付いたんです」