アフターコロナに向けクラシックはじめ音楽界いまが考え時
コロナ禍にあって音楽の世界もコンサートが軒並み中止となるなど大きな打撃を受けている。もとからコンサート収入のみでは運営が厳しいオーケストラは、コンサートの中止によってその多くがさらなる危機的状況に陥り、また、ソロで活動する演奏家、アーティストも同様に困難な状況に直面している。現在置かれた状況からアフターコロナの展望まで、クラシックをはじめ専門家や関係者、演奏家に聞いた。
クラシックの場合ステージ上にリスクか
「クラシックの場合は客席から始終声援を飛ばすことはないので、こと客席に限っては3密の度合いは他ジャンルよりいくらか薄いと思います。ある意味、満員電車と少し似た条件では、と。ただステージ上は逆で、オーケストラのメンバーが集まること自体がリスク。とくに声楽が入ると他ジャンルより条件が悪くなりそうです。ラテン語、ドイツ語、イタリア語など巻き舌を使ったり、子音を飛ばす言語で歌われることも多く、歌唱法によっては飛沫を拡散するリスクが考えられます」と話すのは、クラシックを専門とする50代男性ライター。 では、いわゆるアフターコロナではどう変わる可能性があるのだろうか。 「徐々に落ち着けばコンサートという形式は戻ってくるでしょうが、感染症が再流行する可能性を織り込んだ形を考える必要はあるでしょう。ソーシャルディスタンスを取らざるを得ず収益減になったとして、それを補うシステムも必要です。クラシック鑑賞の手段としてはレコードや映像などのメディアに収められたものを楽しむのが一つの形。そして、コンサートに出かけ生の演奏を楽しむ形。さらに、コロナをきっかけに中間の形として無観客のライブ配信も定番となるのでは、と思います。コロナ後に訪れる変化に対応できなければ淘汰されてしまう。いまはそんな状態だと思います」(同ライター)
アフターコロナではコンサートの重要性が増す?
また、音楽興行関連の50代女性スタッフは話す。 「携わったコンサートは全部中止なので私自身大変ですが、演者側はもっと大変です。持続化給付金は対象を広げてくれたようですが、それすらもらえない人もいます。音楽だけではなく演劇なども大変で、文化に関わる人は職を変えざるを得ない人たちが大量発生していますよね。クラシックのオーケストラはもともとそれだけで食べていけるのはごく少数で、日々バイトしながら演奏を続けている人たちが多くいます。今度は逆に、それだけで食べていけていた人たちが大変かもしれませんね。私の知る限り、ウーバーイーツのバイトを始めた方がいます。途方に暮れている人は多いですよ」 ただでさえ生活が苦境にあるのに、演奏の機会もないとなればモチベーションを保つのも難しいだろう。深刻な状況だ。 「京都の稲盛財団とか民間の財団が文化芸術活動を支援してくれたり(稲盛財団は受付終了)など、そういった動きは出ているけれど、ヨーロッパではとくにフランスとドイツが国をあげて芸術や文化関連産業への経済支援が手厚いですよね。芸術の社会的ステータスの違いもあるし、芸術文化が経済を支える産業として重要なポジションにあるからですが、日本ももう少し、この分野への理解が欲しいと思います。アーティストってそんなに簡単に生まれないですよね。それはひとつ、国の財産だと思うんですよ」(同スタッフ) また、アフターコロナではコンサートの重要性が増すのでは、という。 「音楽でも無観客のネット配信などテレワーク的な試みをいろいろやっていますが、こういう状況になって、生でエネルギーを交換し合える場がいかに人の心にとって大事なものか、みんなが実感していると思うんです。アフターコロナでは、生で鑑賞することはさらに重要になってくるんじゃないかな、とは感じています」(同スタッフ)