熱かった昭和の映画音楽 作曲家は黒澤明監督とも激しいやりとり
映画と音楽は古くから深く関わりのあるジャンルだ。映画を観ることはある意味、映画音楽を聴くことでもある。映画音楽は映画が伝えようとしていることを音楽によって補強し、伝え、役者の芝居をも一層盛り上げる。そんな映画音楽に着目し「昭和の代表的な男優を通して感じる現代の日本とはどんなものか?」という切り口から『風姿~忘れがたき男たち』と題したアルバムが15日にリリースされる。レーベルはラッツパックレコード。世界各国で生まれたさまざまな音楽を供給し、近年はエッジの効いたアルバムを続々と発表している知る人ぞ知るレコード会社だ。創立者であり代表取締役社長をつとめる音楽プロデューサー棚橋牧人さん(72)に音楽との関わりから今作リリースの理由までを聞いた。
若者にLP盤を、との思いからレコード会社立ち上げ
「今にして思えば、最も純粋に音楽を感じたのは10歳前後の頃にラジオから流れてきたアメリカン・ポップスや映画音楽、日本の歌謡曲などではなかったかと」 1949年4月生まれの棚橋さんが10歳の頃といえば、昭和30年代の中頃。まだラジオが多くの家庭で聴かれていた時代だ(58年から続々とテレビ局が開設、皇太子明仁親王御成婚の中継を機にテレビ受像機が普及し始めた)。 「その頃の感動が今でも音楽の仕事を続けている源だと思います」 と懐かしそうに振り返るが、感動はいささかも色褪せていない。音楽とともに成長し大人になった棚橋さんがラッツパックレコードを立ち上げたのは1981年、31歳のときだった。 「LPレコードが高価で若者が簡単に購入できない時代に、アメリカのクローズ・アウト盤という在庫放出のマーケットがあったんですよ。その商品を輸入販売することによって日本の若者も気軽にレコードが買え、音楽をたくさん聴いて楽しむことが出来るのではないか、と考えて創業しました」 アメリカのLP盤輸入からスタートし、その後イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、ブラジル、香港、ハワイなどからの音楽作品を輸入し、現在では国内のあらゆるジャンルのインディーズ作品の供給を行っている。近年では2016年にリリースしたアルバム『Too Young』が第58回日本レコード大賞の企画賞を受賞。これは15歳で同曲をレコーディングした江利チエミ、28歳時の美空ひばりの原盤音源に、レコーディング当時76歳の雪村いづみが2人に優しく語りかけるようにデュエットした独自の作品として大きな話題になった。