ピアニスト・小原孝 コロナで台無しデビュー30周年、ポジティブ思考で切り抜ける
クラシックをはじめ歌謡曲、J-POP、洋楽、民謡、童謡とさまざまなジャンルで演奏を続けてきたピアニスト・小原孝は、歌い手がいなくてもピアノから“歌声”が聞こえてくると評される。そんな“詞(ことば)で奏でるピアニスト“小原にとって今年はデビュー30周年の記念イヤーだが、コロナ禍でコンサートなど計画していたことがほとんどできなくなったという。唯一実現できたのが、27日リリースのアルバム「弾き語りフォーユー」(キングレコード)だ。同名番組を22年に渡りNHK-FMで続ける小原に、音楽とのふれあいからアフターコロナの展望までオンライン取材で聞いた。
時代とともに変わってきたクラシック界の常識
「父(小原二郎)がクラシックのギタリストで自宅がギター教室だったので、物心ついたときから音楽漬け。音楽ならなんでも好きでした」と、音楽との出会いを話す小原。中学から国立音楽大学附属中学校、国立音楽大学附属高等学校を経て国立音楽大学へ。1986年には国立音楽大学大学院を首席で修了と、まさに音楽ひとすじの人生を歩んできたが、ここ10年ほどで急速な変化を感じるようになったとか。 「僕が学生の頃はクラシックを学ぶ人間が他の音楽をやるのはおかしい、とされていました。ポピュラーをやるのは変な人、だったんです。でもいまは、いろいろなジャンルをやることが『小原らしい』と言われるようになった。僕自身のスタンス的には子どもの頃も学生の頃もデビュー後も変わらないのですが、だんだん時代とマッチしてきたんでしょうね」 コンサートに対する考え方も変化してきたそうだ。 「僕はデビューのときからトークをするスタイルでやってきましたが、昔は演奏会というと咳払いひとつしてはいけないような敷居の高さがありました。実際、デビューの頃は音楽評論家から『ピアニストはしゃべるべきではない』と書かれたのですが、いまは若い人たちはトークできなければお仕事がない、と言われる時代です」 キャリアの最初から、クラシックの枠にとらわれない活動をしてきた。 「今回のアルバムにも収録したデビュー当時の『ジル君はピアニスト』という曲は、クラシックと『猫踏んじゃった』を組み合わせた曲ですが、昔は遊びの曲をピアニストがフィーチャーするなんてもってのほか、と言われました。僕は昔、コンサートツアーで『猫踏んじゃった』を子どもたちと連弾するコーナーを作って、その頃そう怒られたんですが、それに出た子が大人になりプロになって活躍しています。『ピアノをやめたいと思っていたけど、あのとき猫踏んじゃったが楽しかったから続けることができた』なんて言ってくれたのですが、嬉しかったですね。答えはすぐ出るものではないんですよね」