休業補償を受けられない――飲食店アルバイトの苦悩、制度の盲点と求められる支援金
申請が複雑な支援金
雇用調整助成金があるにもかかわらず、一部の企業が非正規労働者に休業手当を払わないのはなぜなのか。飲食店ユニオンの栗原耕平代表は法の適用が曖昧なところに問題があると指摘する。 「雇用調整助成金は、企業に休業手当支払いを義務づけるものではありません。また、シフト制労働者の場合、労基法第26条の適用も曖昧です。企業からすると、ここで休業手当を支払うと、今後のシフト制でも適用されるのを嫌っているのでしょう」 では、浅見さんや高橋さんのように休業補償を受けられなかった人への対策はないのか。 企業から休業保障をもらえなかった労働者向けの対策の整備はされている。昨年7月に設置された「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」だ。同制度は、労働者自身が申請でき、平均給与の80%(1日最大1万1000円)がもらえるというものだ。 だが、この制度が利用されているとはいいがたい。昨年度に確保された予算5442億円のうち、支給された決定額は今年6月10日までの累計でも1249億円と23%ほどだ。前出の2人も受け取っていない。
浅見さんは「コロナ特例雇用調整助成金」の対象外であるため、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」の申請を行った。今年4月上旬、採用時の店長に支援金の制度を教わり、手続きを手伝ってもらい「支給要件確認書」などを千葉県の労働局に提出した。だが、6月初旬現在も支払いはないという。 高橋さんは休業補償を会社に要請していたが、もらえる見込みがないため、今年3月下旬、支援金の申請に切り替えた。だが、支給要件確認書を作成するにあたり、「事業主記入欄」への会社の押印や休業の証明をもらうために2カ月以上を費やし、いまだ申請に至っていない。事案によっては事業主の押印や署名がなくても申請はできるが、手続きを経て申請することを決めたため、手間取っている。
ワンストップの労働相談窓口の設置を
労働問題に詳しい大久保修一弁護士は、支援制度はなるべく簡素化し、速やかな支給につなげるべきだと語る。 「今回の危機に際して、特別給付金、持続化給付金、支援金などさまざまな支援給付制度が設けられました。ただし、行政の窓口まで行っても申請手続きが煩雑で、そこで諦めてしまう人もいる。困っているのに、自分が支給要件の該当者だと気づいていない人、どこに相談していいのかわからない人もいる。一人でも多くの人を救うためにはワンストップでできる窓口の設置、そして、その広報を行うべきだと思います」