休業補償を受けられない――飲食店アルバイトの苦悩、制度の盲点と求められる支援金
シフト労働者は休業補償の対象外
ラーメンチェーンの横浜店で働くアルバイトの高橋眞さん(30・仮名)は、最初の緊急事態宣言が発出された翌日の2020年4月8日から5月末まで店舗が休みとなった。高橋さんの時給は1250円で、それまで深夜を中心に1日8時間ほど働き、月収は約17万円だった。だが、5月は店舗清掃で3日出勤しただけで、収入はわずか1万9031円だった。 「2万円を切る給与明細を見たのは9年間働いてきて初めて。驚きました」
高橋さんは、シフト勤務が組まれていた4月中旬までの休業補償は出ていたと言う。 「でも、4月下旬以降は『シフトを組んでいないから休業補償の対象外』と告げられたのです」 労働基準法第26条では会社都合の休業の場合、平均賃金の100分の60以上の手当を支払うことになっている。今回の高橋さんらの休業は、コロナ禍による緊急事態宣言によるものだ。そのため、前述の雇用調整助成金で休業補償を受け取れると高橋さんは思っていたという。
なぜ休業補償をもらえないのかを会社側に尋ねた。会社側の回答は「アルバイトなどのシフト労働者の場合、所定労働時間が観念されず、休業手当の法的な支給義務はない」というものだった。 労働契約書を確認すると、「シフト勤務表による」と記されているだけで、細かな労働時間の記載はなかった。高橋さんは、この仕組み自体がおかしいと批判する。 「結局、『シフト勤務表による』という書き方で、労働時間を毎月変動させることができるんです。これではある従業員の勤務時間が大幅なカット、仮にゼロとなっても、『契約書には労働時間の変更の可能性について明記されている』という口実になってしまいます。それではアルバイトたちはみんなやっていけないですよ」
仲間に後ろめたさを感じる
こうした対応について会社側に確認すると、「シフトが確定していたにもかかわらず勤務ができなかったアルバイト従業員に対して、休業手当を実施している」としたうえで、「シフトが確定していない場合には支給義務はない」と回答した。 昨年6月の営業再開以降は、開店の2時間前の午前9時から掃除を含めた21時までのシフトとなった。深夜勤務がなくなったための措置だったが、もともとその時間帯で働くアルバイトもいたため、その人たちが少し勤務時間を削る形となった。高橋さんは「彼らの時給を奪っている。ごめん」と胸のなかでわびながら、週3~5日ほど働くことになった。月収は4割ほど下がり、10万円程度になった。 高橋さんは、これまでの会社の待遇に満足していた。アルバイトでも3万~5万円のボーナスが年2回出て、有給休暇もある。アルバイトも大切にしてくれる会社だと思っていた。その恩義に報いる気持ちで仕事に励んできたが、そんな気持ちはコロナで潰えたという。 「9年間も働いてきたけれど、コロナで厳しくなったら面倒は見ずに、バイトはポイと。裏切られたような気分ですね」