ノーベル委員会が日本被団協を高評価 核兵器の懸念が高まるなか…海外でも注目
海外メディアも注目…史上最多の報道陣
ノルウェー・ノーベル委員会によると、今回の日本被団協への授賞式や関連イベントを取材するジャーナリストの数は約200人、これは史上最多だという。ノーベル委員会の広報担当者も注目度の高さに驚いていた。 ノルウェー国立放送NRKの記者は「世界に非常に重要なメッセージを与えます」と、日本被団協のノーベル平和賞受賞の意義を強調した。 「特に今年は世界中で多くの戦争が起きていて、人々は核兵器が使われることを心配しています。なので被爆者が注目されることは大切なことです」(ノルウェー・NRK記者)。 また公式記者会見で田中煕巳さんの言葉を聞いたポーランドのPAP通信の記者は、被爆者の生の声が胸に刺さったという。 「核兵器がどれほど悲劇的で恐ろしいものか、言葉では言い表せません。なぜなら、被爆者はそれを経験し、証言しているからです。また世界の指導者たち、特にプーチン大統領に対する直接的で、的確なメッセージに言葉を失いました。核兵器の脅威を利用する者は、被爆者の言葉の意味を理解していません。被爆者のメッセージは明確で、責任感があり、誠実で、勇敢で、経験に裏打ちされていました」(ポーランド・PAP記者)。 世界中の多くのメディアが日本被団協のノーベル平和賞受賞に注目したのは、いまこそ核兵器が使用される脅威が高まっていると認識し、それを防がなければいけないという思いがどこかにあったからではないだろうか。
届かなかった声…ロシア・中国が授賞式を欠席
授賞式には、核保有国のうち、アメリカ(大使代理)、イギリス大使、フランス大使、インド大使、パキスタン大使が出席したのに対し、ロシア、中国は欠席した。 欠席の理由について中国大使館は「大使の日程上の都合」とし、ロシア大使館は明確な理由をコメントしなかった。ノルウェー・ノーベル委員会によると、両国とも授賞式に招待していたという。 ノーベル平和賞の授賞式は、賞の創設者アルフレッド・ノーベルの命日にあたる12月10日に、毎年行われることが決まっていて、各国の在ノルウェー大使が招待されることになっている。つまり授賞式の日程や大使が招待されることは両国ともに把握していたはずだ。 私は授賞式の取材を終え、ロシアと中国の欠席を各国の大使やノーベル委員会はどう考えているのか、と思案をしていると、見覚えのある人物が前から歩いてくることに気付いた。偶然にも受賞者の宿泊先近くを1人で歩くフリドネス委員長に遭遇したのだ。 早速、インタビューをお願いしたところ、歩きながらであればと快く応じてもらえた。 「素晴らしい授賞式で、田中煕巳さんのスピーチは力強く、私たちの期待通りでした。すべての大使が被爆者の重要なメッセージに耳を傾けるべきであり、(ロシア・中国の大使らが)もし授賞式にいなかったとしたら、それは彼らにとって損失です」(フリドネス委員長)。 わずか1分のインタビューながら、フリドネス委員長のノーベル平和賞の授賞式が世界平和につながってほしいという思いが伝わってきた。