ノーベル委員会が日本被団協を高評価 核兵器の懸念が高まるなか…海外でも注目
被爆者が若い世代に求めること
授賞式後の夜には、授賞者を祝うたいまつ行列が行われた。被爆者やオスロ市民らがたいまつを手に持って街を練り歩くのが恒例だ。そして今回は平和への願いが込められた「ノーモア・ヒロシマ、ナガサキ」「ノーモア・ワー」などの掛け声が街に響いた。 オスロ滞在中、ノルウェーの14歳の学生リポーターからのインタビューを受けた田中熙巳さんは、若い人へのメッセージを聞かれると、優しく語りかけるように答えた。 「私たちは原子爆弾の犠牲になった人間です。核兵器がいまも地球上にたくさんあって、それがもし使われると人類の破滅につながると私は思っています。だから使わせないこと。それから無くすということを大至急やらないといけません。これが若者の仕事だと思っています」(田中熙巳さん)。 学生リポーターのアローラ・メランドさんは「田中さんの話を聞くことができて良かったです。世界にとって重要なメッセージだと思いました」と話し、インタビューをすぐにインターネットで公開したという。田中さんの生の声が、若い力によってノルウェーや世界各地に届けられたのだ。 授賞式に合わせて、核兵器廃絶を求める署名を毎年国連に届けている「高校生平和大使」の4人もオスロを訪れていた。広島・長崎・熊本から来た高校生平和大使は現地の同世代と交流を重ね、オスロ市内の高校で行った出前授業では自分たちが被爆者から聞いた原爆被害を紹介した。オスロの高校生は核兵器の恐ろしさを学ぶことができたと感慨深そうに感想を述べていた。 ノーベル平和賞授賞式や関連イベントを取材して私が感じたことは、高校生平和大使やノルウェーの学生リポーターのように、若い世代に核兵器の恐ろしさを伝承する草の根運動が広がること、その小さな積み重ねが核兵器の使用や存在を認めないという世界世論の形成につながっていくのではないかということだ。 日本被団協へのノーベル平和賞によって、被爆者が世界に大きく注目される機会となったことは間違いない。今度は若い力が被爆者の思いを受け継ぐことで、21世紀に新たな被爆地・被爆者を生まないということにつながってほしい、そう強く願うばかりだ。 (ANNロンドン支局 佐藤裕樹)
テレビ朝日