大谷翔平、ドジャースで”無双の9月”に! レギュラーシーズン最終盤の成績を徹底分析【コラム】
”得点圏では打てない”も完全克服…?
一般に負の相関がある2つの指標の両立が意味するものは、9月の素晴らしい数字を生み出した、スピードと確実性を備えたバランスのとれたスイングだ。 そして9月の大谷選手に関して、実は見逃せない以下の驚異的な数字がある。 9月:.577 うち9月15日~9月26日(地区優勝決定日):.706 今年のシーズン全体:.283 この数字は、得点圏打率だ。大谷選手にとって特に今年前半伸び悩んでいた数字である。開幕直後の4月には得点圏で18打数連続無安打に終わったこともあった。 その大谷選手が、9月15日のアトランタ・ブレーブス戦以降、地区優勝を決めた9月26日のパドレス戦まで、得点圏で17打数12安打、打率.706の成績を残した。 この間には、得点圏で5打数5安打だった9月19日のマーリンズ戦、連日勝ち越しタイムリーを放った9月25~26日のパドレス戦を含んでいる。 この間の四球は敬遠を含む2で、凡退に終わった5打数中2打数でも、三塁走者を本塁に返している。9月19日~26日に限れば得点圏で11打数10安打、打率.909の成績だった。9月19日のマーリンズ戦から20日のコロラド・ロッキーズ戦にかけては、得点圏で4打席連続本塁打の離れ業も記録している。
自身初の“ヒリヒリ経験”が最高の結果に
大谷選手の得点圏で目覚ましい成績を挙げた時期は、所属するドジャースにとっても最高のタイミングだった。ナショナルリーグ西地区の9月の上位3チームの貯金の推移に、大谷選手が得点圏で大活躍した時期を重ね合わせた。 9月に入る直前で28あったドジャースの貯金は、先発投手陣の故障者続出も背景に、9月に入って伸び悩んだ。そこでパドレスが9月中旬からじわじわと追い上げ、ドジャースのマジックは一旦消滅した。 そして大谷選手が得点圏で快進撃を見せ、チームを救う打撃を見せたのがまさにこの時期だ。その集大成のような試合が9月下旬のパドレスとの3連戦である。 初戦を落とし、いったん確実視されていた地区優勝すら危ぶまれたドジャースを救ったのが、2本の勝ち越しタイムリーなど、2~3戦目の得点圏での全3打席で安打を記録した大谷選手だった。 大谷選手の9月の得点圏での好成績の理由として、チームが地区優勝を争う環境下でのプレー環境があるはずだ。 ロサンゼルス・エンゼルス在籍時は「ヒリヒリとした9月」に無縁だった同選手にとって、今年9月のプレッシャーは待ち望んでいたものかもしれない。緊迫感が大谷選手の集中力を上げる事例は、2023年のWBCでもみられた。 今年の9月、大谷選手は、最終的に「54-59」を達成し三冠王に迫った数字よりもっと貴重なものを体験できたような気がする。 それは、ヒリヒリとした戦いを体験したうえでチームが優勝し、自らもこれに貢献することだ。これこそがまさに移籍先にドジャースを選んだ最大の理由である。もう1つ大きな財産は、ほとんど故障欠場がなくシーズンを終えることができたことだろう。 その大谷選手の2024年の夢は、まだ終わっていない。これからが本番かもしれない。さあ、ポストシーズンだ。
ベースボールチャンネル編集部