“52歳ひきこもり男性”が重度の糖尿病と診断 「人工透析しなければ命に…」 社労士が差し伸べた“救いの手”
筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気や障害で就労が困難なひきこもりの人などを対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。 【画像】たばこ代だけで月3万円… 社労士が体験した『ひきこもり』の衝撃エピソード 浜田さんによると、長年ひきこもりを続ける人の中には、人との接触を避けたいために、健康診断をまったく受けていない人がいるということです。体調を崩しても「我慢していれば、いずれ回復するだろう」と考え、検査も治療もせずに放置した結果、医療機関を受診したときには病状がかなり悪化していたケースも珍しくないといいます。浜田さんが、ひきこもりの男性とその母親をモデルに解説します。
働くことに自信を失いひきこもるように
52歳の野沢智明さん(仮名)は長年、ひきこもりの状態にあります。彼の障害年金の件で、私は母親(84)から相談を受けることになりました。 まずは智明さんの状況を伺いました。 智明さんは大学在学中に就職活動をしていましたが、面接官から厳しい対応をされることも多く、働くことに対して心底嫌気が差してしまったそうです。 しかし、「さすがに無職のまま大学を卒業するのは望ましくない」と思った智明さんは、あまり気は乗りませんでしたが、とりあえず内定がもらえた会社に就職しました。 仕事は不動産会社の営業。運動部のような厳しい上下関係で、新人には達成困難と思われるようなノルマが課されたほか、ストレスの多い飛び込み営業、毎日のサービス残業、成績不振による上司からの叱責などで次第に疲弊していきました。 「このままでは壊れてしまう」 そう感じた智明さんは、就職から1年もたたずに退職。退職後は実家に戻り、再就職先を探そうとしました。しかし、働くことにすっかり自信を失った智明さんは、徐々に仕事を探すことを諦め、ひきこもりのような生活に陥ってしまったそうです。 仕事をまったくしなくなった智明さんは昼夜逆転の生活をするようになり、深夜におなかがすくため、スナック菓子や菓子パンを毎日のように食べ、清涼飲料水もたくさん飲むようになりました。運動もまったくしなかったため体重はどんどん増えていき、最も重いときは90キロを超えていたそうです。 智明さんが30代の頃までは、両親も「そろそろ仕事を再開したらどうか」と促すこともありました。しかし、そのたびに智明さんは顔を真っ赤にして怒鳴る、暴れるといったことを繰り返しました。また、智明さんの不摂生についても苦言を呈すると、同じように怒りをあらわにしたため、両親はそれ以上、智明さんに口出しすることはしなくなったそうです。 長年、不健康な生活を続けていても智明さんは健康診断を受けることもなく、病院を受診することもありませんでした。 そんな智明さんが52歳になった頃、母親に「体がすごくだるい。動くのもしんどい」と訴えるようになりました。 心配した母親は、智明さんを近所にある内科に連れて行きました。血液検査の結果、医師から「状態がかなり悪いので、すぐに大きな病院で診てもらった方がよいです」と言われ、紹介状を書いてもらいました。 その後、紹介された病院で精密検査をしたところ、「長年、糖尿病を放置し続けた結果、腎臓の機能がかなり低下しています。すぐにでも人工透析を開始しなければ命に関わります」と言われてしまいました。 智明さんはすぐに人工透析を開始するために必要な手術(シャント手術)を行い、人工透析を受けることになりました。