和紙を使ったニットポロ!? 素材のプロが考えた、上質なスタイル&快適さを両立する大人のための名品
ウェルドレッサーとして知られるイラストレーターの綿谷寛さんが、自身のトラッド観をアップデートすべく現代のトラッドブランドを深掘りする、雑誌『メンズクラブ』の連載企画「トラッド進化論」。 【イラスト集】NEAT、HEUGN、MADISONBLUE──綿谷寛さんが”新時代のトラッド名品”を探し求めたどり着いた注目ブランドを一挙紹介! 素材のプロと服作りのプロが立ち上げた本格派のニットブランド、スロープスロウにインタビュー。
「これまで夫婦それぞれ、長年紡績とアパレルの製造に携わってきましたが、僕が還暦を迎えようかというときにコロナ感染が広がり、いろいろと思うことがありましてね。売れる売れないはわからないけど、これからは自分たちが本当に好きなものだけを作っていこうと、二人で始めたんです」 と語るのは、ご夫婦でブランドを立ち上げて3シーズン目を迎えた、スロープスロウのOさんとBさん(黒子に徹したいと、ご本人の希望で名前と顔出しはNGの匿名ユニットだ)。 ご主人のOさんは、カシミヤなどの高級素材を扱ってきた経験から主に糸製作を担当。かたや奥さまのBさんは、デザイナーズブランドからセレクトショップまで、企画・デザインを手がけてきた服作りのプロ。
「つまり、ベテランの新人なんです」と照れる二人が、本当に作りたかったものとは? 「大量生産とは真逆なもの。小さな規模でしかできないことを実践してみたかったんです。二人ともヴィンテージのワークウェアが好きなんですが、これらはタフでオーセンティックだから時を超え、経年変化をしても長く愛用される。そんな愛着が湧く服を自分たちの手で届けたい。糸づくりから仕上げに至るまで、手間を惜しまずです。 で、それこそコストなど考えずに良いものを追求したら、結果、それなりの価格になってしまった。別に高級服を作りたいわけじゃないんです。例えば、このヴィンテージのトラックパンツをイメージしたウール100%のパンツ(イラスト下参照)は、カシミヤじゃないけれど上代が8万を超えてしまった。 でも、ケアを考えて製品洗いを施したので、寸法変化がほとんどなく頑丈。また、身体の動きを計算し、前後差のあるパターンで作ったので動きやすく、暖かく、外着としてもサマになる。私たちもヘビーユースしてその良さを実感しています」 ブランドを大きくしようとか、人を増やそうなんて欲はこれっぽっちもない。そんなことをしたら売れ筋を考えることに振り回されるだけだから。B&Oさんが作りたいものは、修理して長く着続けたい愛着のある服だ。
綿谷画伯がたどり着いた、進化した今の トラッドスタイルがこちら
さらっとした手触りが心地よいドライタッチのポロシャツは、和紙糸にウールを掛け合わせた生地で編まれた調湿性に優れた一着。和紙糸は福井のメーカーが独自に研究を重ね開発した、通常より一手間も二手間も手の込んだ高品質なものを使っている。 高速で編むと糸切れしやすいなど扱いの難しい素材ながら、張り感を出すために高度な技術を要するミラノリブ組織で製作するというこだわり具合。
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