なぜ”世紀の再戦”を井上尚弥は「通過点」と語りドネアは「キャリア最大の試合」と位置付けたのか…その先に年末開催で交渉中の4団体統一戦
一方、再起したドネアは、再び井上への挑戦権を手にするため、昨年5月に弟の拓真が敗れたWBC世界同級王者のノルディーヌ・ウバーリ(フランス)から王座を獲得。12月には勢いのある暫定王者、レイマート・ガバリョ(フィリピン)との王座統一戦をも4回KOで退けて、この再戦の舞台へと昇り詰めてきた。 「あの1戦目の直後から私の中の心に火がついた。炎が燃えている。試合には負けたが、自分のベストの状態ではなかったという気持ちからくる炎だ。自信もより大きくなっている」 リベンジに燃えるドネアと完全決着を狙う井上では、この試合の持つ意味合いも違う。 ドネアは「キャリア一番の試合」と熱を込めたが、井上は「目標に向けて通過点に過ぎない」と先を見据えた。井上はドネアを心からリスペクトしているが、発言に温度差が生まれたのも当然だろう。 この試合の勝者は、3つのベルトを手にすることとなり、過去に7人しか達成していない4団体統一王者へ王手をかけることとなる。 WBO王者だったカシメロが減量失敗などのトラブルを繰り返し、とても危なくて、タイトル戦が組めないため、井上は一度は、4団体統一はあきらめ、スーパーバンタム級への転級に狙いを変えようとしていたが、そのカシメロが、英国ボクシング管理委員会が健康管理上禁じるサウナ利用の水抜きの減量をしたためバトラー戦が認められず、タイトルを剥奪され、代替戦で判定勝利したバトラーという新王者が誕生したことにより、かねてから目標に掲げてきた4団体統一が実現する可能性が出てきたのだ。 しかも、そのバトラーとプロモート契約を結んでいるのが、ドネアと契約している新興プロモート会社「プロべラム」で、社長のシェーファー氏が来日して会見でドネアの隣に座り「4団体統一は選手だけでなく全プロモーターの最終的な目標。最近はないし実現した選手がめったにいない。願いをかなえるためにも実現させたい」と約束してくれたのである。 もちろんこれは両者共にチャンスがあるという意味で語っているのだが、井上の勝利を確信している大橋会長は「せっかくシェーファーさんが来ているのだからドネア戦が終わったらすぐに日本で交渉に入る」と断言した。 「イギリスに行ってもいい」という柔軟な考えだが、興行の規模と井上の持つ世界的なネームバリューとベルトの数の原理から言っても年末の日本開催が濃厚だろう。