「資本主義に惑わされて生きてきた過去に見切りをつけて…」歌手・南こうせつが実践した「70歳からできる身仕舞い」
価値を理解してくれる人に託したい
その際のポイントは、価値の高いものから処分することだと、リンボウ先生は言う。 「もちろん、高いおカネに換えられるというのもメリットですが、それ以上に価値を理解している人に託したいという気持ちのほうが強い。たとえば、江戸時代の有名な小説家、上田秋成が書いた巻物や、国学者で歌人の賀茂真淵の真筆も妥当な値で売れて、古典の研究者の手に渡ったと聞いています。ちゃんとした人に受け継がれたことが何よりよかった。 そういう意味で、私の人生の大掃除とは、身軽に処分してこの世からなくすのではなく、大げさかもしれませんが、自分の目の黒いうちに、後世の人に引き継いでもらう段取りを整えておく作業だと理解しています」
運転免許所の返納
そんなリンボウ先生も悩んでいることがある。車の処分、そして、いつ運転免許証を返納するかということ。 「私は大の車好きで、何台も買い、これまで150万kmは乗ってきたでしょう。どうしても車の運転には未練があります。しかし、年齢も年齢なので、いつかは踏ん切りをつけないといけない。それが今後の最大の課題となるでしょう。 私は安全運転を心がけていますが、それでも反射神経は年相応に衰えてきているように思います。判断ミスで事故を起こしてしまうかもしれません。数年前には、高性能カメラが危険を察知するシステム『アイサイト』を搭載したスバルの車に乗り換え、これを人生で最後の車にしようと考えています。 車を処分して、免許返納すると、これまで車で行っていた信州の別荘もおそらく処分することになるでしょう。そうやって自然に、人生の移り変わりに従って、物は減っていくのだと思います。いつまでも執着するのではなく、自分から先手を打って踏ん切りをつけることも重要なのです」 もちろん、物を処分するばかりではない。リンボウ先生には楽しみもある。それが絵画だ。 「絵は年を取っても腕が動けば描けます。葛飾北斎も伊藤若冲も長生きして、亡くなる直前まで描いていたというので、私も絵を描く楽しみを味わいながら、たまに国内旅行をして生きていければと思っています」