「富士山噴火」で起きる「火砕流」とすさまじい破壊力の「火砕サージ」…もし襲われたら「即死」の恐怖
火砕流と火砕サージの被害予測と課題
火砕流及び火砕サージについての可能性マップを見ながら、どのようなことが起こりうるのかを考えていこう。 富士山では、火砕流は山腹と山頂を問わずに発生する可能性がある(山腹など山頂以外の火口については、以前の記事〈富士山噴火の「避難計画改定」で大注目「富士山の側火口」の列に隠された「重大な意味」〉を参照されたい)。 標高の高いところで噴出した火砕流は、一気に斜面を駆け下りるために危険性が非常に高い。したがって、山頂付近や五合目以上の高地で火砕流が発生した場合には注意が必要である。過去の富士山の実績では、このような高地の火口からのみ火砕流が発生している。 これまで富士山で確認された火砕流は、谷沿いにのみ確認されているが、これは一定量以上の堆積物が斜面上の侵食に抗て残されたものである。これ以外にも量の少ない火砕流や火砕サージの堆積物があった可能性は高い。 つまり、これまで知られているよりもさらに広い範囲を、薄い火砕流や火砕サージが襲ったかもしれないのである。とくに火砕サージは流動性がきわめて高いことから、谷に沿ってだけ流れるわけではないことに十分留意する必要がある。 火砕流と火砕サージは、噴火の開始からやや時間が経ってから発生すると予想される。しかし、具体的にどのくらい経過してから起きるかについての予測は難しい。とくに山頂付近でマグマを噴出した場合には、噴火が始まってから比較的早い時期に火砕流が起きることを考慮しておく必要がある。
もし襲われたら「即死」の恐怖
高速の火砕流が流下する場合には、前もって遠くまで逃げておくしか手だてはない。発生に気づいてから避難するのでは間に合わないのである。 火砕流が高温の場合には、家屋ごと短時間で焼き尽くしてしまう。人が直接巻き込まれた場合は、即死すると考えられる。雲仙普賢岳の火砕流の場合では、全身の皮膚だけでなく気管支が焼けただれるという被害が出た。屋内にいた場合でも、窓やドアを破って流入することがあるので助からない場合が多い。 火砕流の温度がやや下がって火傷の程度が軽い場合でも、火砕流に入っている岩片や軽石などの強い衝撃で外傷を受ける可能性が高い。