「富士山噴火」で起きる「火砕流」とすさまじい破壊力の「火砕サージ」…もし襲われたら「即死」の恐怖
登山客や観光客への備え
火砕流の可能性マップで想定されている火砕流の到達範囲には、人家の密集する地域は含まれていない。しかし、夏山シーズンに山小屋へ宿泊する登山客などについては、火砕流の危険性が少なくない。さらに、ゴールデンウィークや紅葉の時期に、バスや自家用車で五合目まで行く観光客の危険度はもっと大きいと考えられる。土地勘の乏しい膨大な数の人々に対する迅速な対応が必要である。 火砕流が湖に流入した場合には、二次的な水蒸気爆発を起こすことも考えられる。しかし、これまでの発生状況から可能性マップでは、富士五湖などの湖水地域まで火砕流が到達することはないとされている。 また、富士山は冬季には雪で覆われ、最大の積雪は4月頃になる。この時期に高所で火砕流が発生した場合には、融雪型の泥流が起きる可能性がきわめて高い。すなわち、高温のマグマが雪を融かして体積を増加してから、一気に流下するのである。たとえば、北海道の十勝岳ではこのタイプの融雪型泥流が起き、大正時代に麓の集落へ甚大な被害をもたらしたことがある。 ◇ 今回の解説後半で取り上げられた「泥流」。降雪地での噴火による泥流では、さらに大きな被害が生じると言います。もし、富士山でこの泥流が起こったら、どれほどの規模で起こると考えられているのでしょうか? この「泥流」について、あらためて、ご紹介したいと思います。 続く〈「噴火は高温」のイメージを覆す「水と泥」の地獄…富士山噴火で「泥流」が襲ってきたらどうなる〉は下の【関連記事】よりどうぞ。 富士山噴火と南海トラフ――海が揺さぶる陸のマグマ
鎌田 浩毅(京都大学名誉教授)