「富士山噴火」で起きる「火砕流」とすさまじい破壊力の「火砕サージ」…もし襲われたら「即死」の恐怖
もし、いま富士山が噴火したら、なにが起こるのか、あなたはご存知ですか?―― 2011年3月に起こった東日本大震災は、富士山を「噴火するかもしれない山」から「100パーセント噴火する山」に変容してしまいました。 【画像】「すべて」を焼き尽くす「火砕流」の想像を絶する「高温」と「スピード」 火山による被害として「火砕流」が知られており、1991年から数年にわたって活動した雲仙・普賢岳でも大きな被害が生じたことを覚えている方も多いと思います。この火砕流によく似た減少に「火砕サージ」というものがあるのをご存知でしょうか? 実は、雲仙・普賢岳の火山活動でも確認された現象です。 富士山が噴火したとき、この「火砕サージ」も起こるのでしょうか?火山の第一人者で、ニュース解説などでもお馴染みの地球科学者・鎌田 浩毅さんが解説します。 *本記事は、『富士山噴火と南海トラフ』から、内容を再構成してお届けします。
火砕流に似た火砕サージ
火砕流と同じように火山灰や軽石を内部に含む高温・高速の流れとして、「火砕サージ」というものがある。 火砕サージの堆積物は、火砕流に比べるとずっと薄い(拙著『富士山噴火と南海トラフ』では、雲仙・普賢岳で観察された火砕サージの貴重な写真を掲載することができた。機会あれば、ぜひご覧いただきたい)。一般に、火砕サージが通過したあとの地面を覆う堆積物の厚さは、数センチメートル程度にすぎない。火砕流に比べると流れ出す物質の量が少ないために希薄な流れとなると考えられており、「火砕流よりも流れる最中の密度が小さい」のが火砕サージと考えてよい。 いわば、高温の砂嵐のような現象である。 しかし火砕サージは、流域にある建物を倒し焼き尽くすほどの破壊力をもつ。火砕サージが火山体の斜面に沿って流れる場合は、噴出口から5キロメートルを超える距離まで流れ下る。 火砕サージを火砕流とはまったく別のものと考える必要はない。富士山のハザードマップでは火砕流と火砕サージを一緒に取り扱い、火砕流のうち流れの物理的特徴が異なるものとして対処されている。