世界柔道が今日開幕! なぜ“世界の山下”は金メダル獲得期待数を明かさなかったのか?
柔道の世界選手権が今日25日から東京・九段下の日本武道館で開幕する。24日は、都内ホテルで組み合わせ抽選が行われ、男子の井上康生監督は、全種目金メダル獲得を掲げたが、全日本柔道連盟の山下泰裕会長は、海外メディアにメダルの獲得期待数を聞かれ「コメントし辛い」と答えなかった。東京五輪で金メダル「30個」を目標に掲げる日本にとって柔道は、金メダル量産競技。1年前に開催される世界選手権は東京五輪の成否を占う意味で重要なプレ五輪大会となるはずだが、なぜ“世界の山下”はコメントを避けたのか? 開幕カードは、男子60キロ級と女子48キロ級が行われ、男子60キロ級には大会3連覇を狙う高藤直寿(26、パーク24)、女子48キロ級には、2017年の王者である渡名喜 風南(24、パーク24)が登場する。
井上康生監督は全階級金メダルを目標に
コンピューターシステムによる組み合わせ抽選会。各階級ごとに、昨年の世界選手権のメダリストと世界ランキングの上位4選手がビデオ映像で紹介された後に、まずその4人がA、B,C,Dのプール(トーナメントの山)に振り分けられる。続いて目にも止まらぬ早さで巨大スクリーンに映し出されたトーナメント表の空欄が埋められていく。 抽選結果を見た男子の井上監督は「いい意味で緊張した」という。 「どこのパートに入っても厳しいと思っていた。1回戦から強豪と当たる準備はしておけよ、と話していた。想定内といえば想定内。世界では何が起こるかわからない。選手がここまでやってきた努力、能力を心から信じて1戦1戦、腹をくくって戦うのみ」 そして今大会の目標をぶれずに繰り返す。 「みんなが金メダルを目指すという思いで。監督としては、それを信じて、団体戦においては総力戦。チーム一丸となって日本の柔道界の総意を見せていきたい」 目標は、全階級金メダル獲得である。 女子の増地克之監督も「ベスト8までのシードは予想していたとおり。中には初戦から厳しい組み合わせとなった選手もいるが、自分の力を出してくれれば。調整は非常に順調に仕上がっている。団体戦を含めて、今回の11人が、東京五輪に一番近い選手。この世界選手権がどういう位置にあるかはわかっている。まずは持っている力をすべて出し切って自分を信じて戦ってもらいたい」と“プレ五輪”にかける思いを口にした。 だが、公式会見では、ロス五輪無差別級金メダリストの“世界の山下”、全柔連の山下会長は、ロシアの記者に今大会の日本のメダルへの期待はいくつか?と質問され、「コメントし辛い」とお茶を濁した。 ただ逃げたわけでも自信がないわけでもない。 「強化委員長、男女の監督に聞いてもらうのがいいでしょう。本当の話をすると、2か月前にJOC(日本オリンピック委員会)の会長となり、7月に多くの1年前イベントがあり、全柔連の(会長としての)仕事をあまりできていません。男女共にベストコンディションで最高のパフォーマンスを発揮してもらうことを期待していますが、私の責任上、(日本選手の)状況をよく知らないでコメントすることが難しいのです。ご理解ください。去年、一昨年と日本は頑張りたくさんのメダルを取ったが、冷静に見ると紙一重。勝つにしろ、負けるにしろ、高いレベルで際どい戦いがどの階級でも展開されるでしょう」 竹田恒和・前JOC会長が、数々の疑惑が浮上したことにより任期満了で退任したことで急遽、この6月にJOCの新会長に就任した山下氏は、東京五輪を1年後に控え、全柔連会長の仕事に集中できない状況にあった。しっかりとした選手やチームの現状を把握できていない状況で、いい加減な「メダル獲得宣言」はできないというわけである。誠実で責任感の強い山下会長らしい対応だったと言える。