【自民党総裁選】少子化対策は?京大の柴田教授にきく
■給食無償化の効果は?
──学校給食無償化を複数の候補者が掲げています。仮に年収制限なしで小・中学校で実施すると約5000億円かかると推計されていますが、効果はどうでしょうか、 柴田教授)東大の山口慎太郎先生がよくおっしゃっていますが、しっかりと栄養を確保するなど、こどもの育ちの保障という意味で重要です。他方で、少子化対策として効果があるかはおそらく研究がなくて、出生率がどのぐらい上がるのかは推計が難しい。おそらくあまり大きくは上がらないのではと思います。 ──先生も前からおっしゃっていますが、保育の質向上が必要との声も、子育て支援団体などからあがっています 柴田教授) 保育の質を考える上で、いろいろな研究はありますけれども、配置基準は非常に重要です。いくら保育士のスキルが高くても、配置基準が劣悪だと保育の質が下がってしまう。加速化プランでは75年ぶりに配置基準を改善したので、それは評価したいですが、まだ道半ばですね。4,5歳児クラスで保育士1人に子ども30人だったのが25人になりましたが、先進国平均が18人なのでまだまだ改善の余地があります。保育の質を改善することで子どもの育ちの保障にもつながり、安心して預けられる。 ただ、出生率引き上げ効果があるかは研究がない。保育の「定員」が増えると出生率が上がるのは、いろんな研究でわかっていますが、「質」の出生率引き上げ効果は分かっていません。
■大学無償化は少子化に効果があるのか
──大学など高等教育の無償化は2025年度からさらに拡充されますが、対象は「扶養する子が3人以上の世帯」と限定的です。20代,30 代の人たちは奨学金の負担が非常に苦しいと言いますが、無償化による少子化対策への効果は? 柴田教授)高等教育の無償化に関しては、私独自の分析で、高等教育の学費負担を軽減していくと出生率が上がる傾向は見えています。加速化プランに盛り込まれた「高等教育の無償化」は2600億円ですから、それによる出生率の上昇は 0.01くらいと予測できます。今後も無償化の対象をもっと広げていくことで、結婚や出産のハードルは下がると思います。希望通りの数の子供を持たない理由の第1位が教育費ですし。 ただし、大学進学などは産んでから約20年後の話なので、無償化をしたとしても、若者の将来不安が解消されないかぎりは、結婚や出産のハードルを下げる効果は小さいかもしれません。
■総労働時間を減らす必要は?
──残業の割増賃金率を上げるだけでなく、労働時間の上限を将来的に減らしていくのはいかがでしょうか 柴田教授)将来的には視野に入れるべきだと思います。アメリカは労働時間の上限がないですが、ヨーロッパは労働時間の上限が厳しい上に、11時間の勤務間インターバルも義務化されています。フランスは法定労働時間が週35時間で、日本もゆくゆくは法定労働時間を35時間ぐらいにまで段階的に短縮していくことが、生産性を高める上でも、幸せに生きやすくしていく上でも、少子化傾向を緩和していく上でも、理想的だと思います。