【自民党総裁選】少子化対策は?京大の柴田教授にきく
自民党の総裁選では、少子化対策について、どう論じられているのか。少子化対策や子育て支援策について国の内外の論文などをもとに分析し、国会などでも提言してきた京都大学大学院の柴田悠教授にききました。
■各候補者の少子化対策をみてみると
柴田教授)石破さんと高市さんは、成長産業への政府投資による経済成長、それにより、若者の所得を増やし、少子化対策になるという考えは共通していて、それ以外の部分で違いがあります。 石破さんは給食や国立大学・高専の無償化と女性負担の軽減をめざしています。女性の家事・育児の負担の大きさや、その裏にある男性がなかなか家庭の時間を持てないこと、地方での女性差別など、時間的・身体的な負担だけでなく、差別も含めて改善が必要だと、多角的に少子化の要因を検討されています。生産性を上げて労働時間を減らすことや、家事育児介護のアウトソーシング支援も掲げています。高市さんも、ベビーシッターを含む家事支援サービスを国家資格化して税控除することで、女性の負担の軽減をめざしています。また、学校給食の無償化も掲げていますが、石破さんや加藤さん、上川さんといったほかの候補もこれをあげています。加藤さんは出産費やこども医療費の無償化や、保育士・教員の処遇改善、保育・学童保育の充実、高等教育の給付型奨学金拡充など、幅広い少子化対策を掲げています。教員の処遇改善は小林さんも掲げ、上川さんは病児・延長保育を掲げています。 小泉さんは、成長分野への労働者の移動を加速度的に活性化させて経済のダイナミズムを取り戻すことで、若者の実質賃金を増やし将来への不安を解消していくことを掲げていて、これが少子化対策につながるという考え方のようです。労働移動を活性化させるために、企業に退職者へのリスキリングと生活支援・再就職支援を義務づける方向で、解雇規制を見直すと発言されています。また、全体的な残業時間を減らしていくという安倍政権からの働き方改革を進めながら、少数のもっと働きたい人には選択肢を作るとも発言されています。最低賃金を引き上げた上での「年収の壁」の撤廃や、同一労働同一賃金による非正規雇用の賃金改善も掲げていて、これらも少子化対策につながるでしょう。 ──小泉さんが掲げる解雇規制の見直しや労働時間規制の見直しなどは、青天井で働かされるのかといった懸念もあります。 柴田教授)たしかに出馬当初はそれらの「見直し」が「緩和」の方向性のみを意味すると解釈されがちで、私も当初そのように懸念していました。しかし、その後小泉さんは、全体的な残業時間を減らしていくという安倍政権からの働き方改革はひき続き進めていくとメディアでおっしゃってますね。 他方で、より長時間働きたいという人も少数ながらいるので、労働時間規制の進め方や見直しについては一年間以上かけて専門家に検討してもらうと発言しています。