選手たちに存分に味わってほしい、五輪の「特別な高揚感」【松田丈志の手ぶらでは帰さない!~日本スポーツ<健康経営>論~ 第6回】
パリ五輪には、旭化成からは男子柔道81kg級の永瀬貴規(ながせ・たかのり)選手、男子20㎞競歩の池田向希(いけだ・こうき)選手、男女混合競歩リレーの川野将虎(かわの・まさとら)選手の3選手が出場します。壮行会には200名ほどの社員が集まり、オンラインでも全国の支社や工場からたくさんの方々が参加しました。選手たちは現在のコンディションや気持ち、東京五輪からこれまでの道のり、会社のサポートへの感謝やパリ五輪の目標などを語り、トークショーは大いに盛り上がりました。会社の皆さんも非常に温かい雰囲気で、選手を応援する気持ちが強く伝わってきてとても良い壮行会でした。私も現役中に所属企業やスポンサー、地元の方々からいただいた応援を思い出し、胸が熱くなりました。 アスリートは時に孤独です。私でいえば、夏も冬も朝から晩までプールの底を見ながら何十往復も泳ぐ生活は、世間から自分ひとりだけが乖離しているような感覚に陥ることもありました。そんなとき励みになったのが所属企業やスポンサー、地元の皆さんからの激励でした。「応援しているよ」「感動した」「頑張ってね」――それらの言葉は、「結果を求めてひたすら泳いでいる自分の水泳人生が誰かの心と感情に届き、何らかの活力を生み出しているのであれば、意味があるのではないか」と感じさせてくれたものでした。 もうひとつ思い出したのは、選手としては今後もう味わえないであろう五輪前の「高揚感」です。 オリンピック本番に向けてのカウントダウンが始まり、数年かけてつくり上げてきた肉体と技術で勝負する日がやってきます。試合が近づくにつれて血液が沸騰し、身体の細胞ひとつひとつが五輪に反応して仕上がっていくような感覚がありました。それは、自信と不安とが交錯する中でもいよいよ準備が整い、これから特別な時間を迎えようとしている高揚感でした。 選手としての高揚感は、私はもう味わえませんが、多くの人がそうであるように、五輪に出場する選手を応援することでその高揚感の一部を味わうことはできます。パリ五輪閉幕まで、大いに楽しませてもらいたいと思います。 選手の皆さん、今が最高の瞬間です。五輪の高揚感を十分に味わってください。 文/松田丈志 写真提供/株式会社Cloud9