多国籍な文化が調和した料理家のインテリア。|アーティストのパリの家(1)
Kitchen
アトリエは白を基調とした静謐なエレガンスが宿る空間。広い食卓にはヴィンテージのうつわを揃え、大勢でシェアできるようにたくさんの料理を提供する。
"コミュニケーションディナー"と称した夕餉は、週2回ほど開催され、口コミで集まった約20人が参加。趣味関心が近く、共通項はあるけれど、いままで知らなかった人たちが集まってくるため、新たな人間関係や人脈を生むと注目されている。
常に新しいことに挑戦するジュマナだが、最近は食材を用いたアート作品も手がけている。最新作は、パンを長い間乾燥させることで仕上げた、プレートやカゴ、カトラリーの彫刻シリーズ。陶器やガラスではなくパンという食べられる素材を使うことで、永遠に復元可能な食卓をイメージしている。
Salon
「ベイルートでの最後の記憶は、8歳の頃、たくさん料理が並んだ広い食卓を家族で囲んでいたこと。でも、空港に突然向かわなければならなくなって、その夕食を食べることはなかった。それから一時的に家族はバラバラになり、長い間会うこともできなかった。私は、あの食卓をどうしても再現したかったんです」
人生は永遠には続かないけれど、たとえ永遠でなくても、食卓を囲む一瞬一瞬を美しいと感じることが大切だと話す。
ジュマナにとって、人と幸せな時間を共有できる場所を作ることそのものが、人生の喜びなのだ。 *「フィガロジャポン」2024年9月号より抜粋
photography: Mari Shimmura text: Momoko Suzuki