仮釈放認められず「もう出られない」、自暴自棄になる囚人も 無期懲役の「終身刑」化に危機感
無期懲役で服役する受刑者の多くは今、獄中で亡くなっている。約1700人いる無期懲役囚のうち、2022年に仮釈放を許されたのは6人のみで、41人が死亡した。狭き門の社会復帰を果たしても頼れる人がすでにいないことも珍しくない。そんな彼らを「見放して殺してしまうのは…」と塀の外で待ち続ける人たちがいる。そして、その手助けで社会に戻った者も。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介) 【動画】1958年~2022年を刑務所で過ごした91歳の無期懲役囚
●矛盾した気持ちで無期囚を受け入れ
「私は死刑存続(派)ですからね」 岡山市にある更生保護施設「古松園」の常務理事、岩戸顯(いわと・けん)さん(78)が意外な一言を発した。 「『目には目を』じゃないけど、やっぱり人を殺したら死んで詫びないけん。『罪を憎んで人を憎まず』なんてそんなきれいごとじゃ済まんですわ」
ただ、と言ってこう続けた。 「生きとる間は、自分の犯した罪を常に反省する気持ちを持っていないとだめよというのを教えてやらないかんでしょ。まぁ矛盾しとるような感じがするけどね」 更生保護施設は、刑務所や拘置所を出た後に帰る場所がない人らを一時的に受け入れて自立を支援する場所だ。 ここ古松園には全国の刑務所から問い合わせが舞い込む。無期懲役囚だけでも現在70人を超える受刑者の身元引受人になっているという。
●古松園で暮らした男性「チャンスもらった」
古松園は2023年秋、岡山刑務所から仮釈放された男性Aさん(69)を受け入れた。 Aさんは1980年代に強盗殺人事件を起こして無期懲役囚となり、約40年を塀の中で過ごした。 「無期懲役になった時、『死刑じゃないんだ』『もう一回やり直すチャンスをもらったんだ』と思いました。被害者には申し訳ないが、家族に(刑務所を)出た姿を報告したいと思って過ごしてきました」 出所前は「自分みたいな者が働かせてもらえるだろうか」と心配がつきなかったが、 出所直後から古松園で半年を過ごし、施設の援助もあって理解ある雇用主と出合い職を得た。 今は1Kの賃貸アパートでひっそりと一人で生活する。「辛抱強い人なんです」。そう紹介する古松園の職員の話を、Aさんは正座したまま恐縮するように聞いていた。