仮釈放認められず「もう出られない」、自暴自棄になる囚人も 無期懲役の「終身刑」化に危機感
●「ここが一つのよりどころ」
Aさんのような無期懲役囚が仮釈放されるには、受け入れ先の確保が前提となる。しかし刑期が具体的に決まっていないがゆえに、施設側が受け入れの判断をするのは簡単ではない。 そんな中、古松園はほぼ無条件に無期懲役囚を迎えてきた。創設から130年近い歴史があり、近隣住民が役員に入っていることなどから地域で反対運動が起きることはないという。 「ここが一つのよりどころですわ。希望を持たせてやる。引き受けがないと(仮釈放許可の)箸にも棒にもかからんわけですから。出られる出られんは別として、一応レールの上には乗してやらなけん。やっぱり『矯正』ですわ。見放して殺してしまうのはどうかと思います」(岩戸さん)
●出所を前に「不安が大きくなった」受刑者
施設を出た後の暮らしも出所者が抱える課題の一つだ。 刑務所では指示された以外の行動を厳しく制限されるため、長年服役した受刑者が社会に戻って生活することには様々な困難が生じる。 先ほどのAさんもずっと社会に戻ることを夢見ながら、実際に仮釈放が決まった時、「不安の方が大きくなった」という。 こうした出所者の悩みや困りごとを早いうちに解消して安定した生活を送れるよう、古松園では利用者が施設を出て一人暮らしを始めた後も職員が本人の自宅を訪問して日常生活をサポートしている。介護が必要になった時には福祉の支援につなげる。 Aさんはまだ若く健康面に大きな問題はない。そのため、訪問支援として今は職員が話し相手になったり買い物に同行したりする程度だが、職場やプライベートで自らの過去を明かして人付き合いすることが難しいAさんにとっては貴重な機会になっている。 「こんなことじゃないと人と話すことがないので、安心して話せます」 再び塀の中に戻ることがないよう、人間関係のトラブルには細心の注意を払っているという。 「人に興味を持ってしまったらトラブルの原因になってしまう。そう考えていると、他人に対してどんどん消極的になってしまいます。これをやりたいという目標は残念ながらありませんが、働けるうちは働きたいと思います」