仮釈放認められず「もう出られない」、自暴自棄になる囚人も 無期懲役の「終身刑」化に危機感
●無期囚は「連合赤軍元幹部」、待ち続ける弁護士
一方、無期懲役が長期化していることを身をもって感じている「待ち人」もいる。 元検事の古畑恒雄弁護士(91)は現在、身元引受人として男女2人の無期懲役囚の仮釈放を待ち続けている。 そのうちの一人が吉野雅邦(よしの・まさくに)受刑者(76)。1972年に起きた連合赤軍による「あさま山荘事件」に関わったとして、1979年に無期懲役判決を受けた人物だ。 逮捕されてから50年近くが経つ中、吉野受刑者の両親はすでに亡くなり、知的障害がある兄は施設で暮らしている。たとえ仮釈放されても面倒をみられる人がいないため、古畑弁護士が現在、吉野受刑者の親が残した家の管理などを担い、彼の帰りを待つ。 「仮釈放されたら彼は被害者遺族へのお詫びに回りたいと言っています。今出てきても彼が再犯する可能性は全くありません」 手紙や刑務所での面会を通し、吉野受刑者に再犯の恐れはないと強く感じている古畑弁護士。 早期の仮釈放を願っているが、その見通しは全く立っていない。
●進む”終身刑”化 「見捨てられた犯罪者群」
法務省が2023年12月に公表した資料によると、2022年末時点で無期懲役囚は計1688人いる。2022年の1年間に仮釈放を許可されたのは6人のみで、41人が死亡した。 施設が引き受けを決めても獄死する可能性が高くなっている。中には服役から40年以上経っても仮釈放が認められず、「もう出られない」と自暴自棄になる人もいるという。 20年前後で出所できたのは今となっては昔のことだ。新たに仮釈放された無期受刑者の平均在所期間は30年超えが一般的になっており、2022年には45年3カ月まで伸びた。 こうした状況に古畑弁護士は危機感を強めている。 「今の無期懲役刑は、法律に基づかずに内部通達の運用によって密かに終身刑とされている。無期懲役囚は見捨てられた犯罪者群というような感じがします」
●揺るがぬ信念 「人間は変わりうる」
被疑者を調べる検事と、罪を犯した人の立ち直りを支援する弁護士という二つの立場を経験したが、「どんな罪を犯した人でも変わりうる」という古畑弁護士の信念は揺らがない。 「日本では無期懲役に関する情報が少ないため、無期懲役囚の心情や境遇についてあまり議論されていません。来年に拘禁刑が導入されるなど、刑事政策が今大きく変わりつつあるので、受刑者の処遇も人間味のあるものにしてほしい」 命ある限り、吉野受刑者の出所を待ち続ける覚悟だ。 ※この記事は弁護士ドットコムニュースとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。