総レースのボクサーパンツ⁉そもそも男女の服の違いがあった理由とは
西洋の衣服は、長い間男女間の差異を生み続けてきた、と東京都庭園美術館学芸員の西美弥子さん。その端緒は14世紀までさかのぼるという。 「男性が上衣とズボンとに分かれた上下二部式服を着用し始めたのです。けれど、女性たちはそれまで同様ワンピース型の衣服を踏襲しました」 機能的な新型は肉体労働の比較的多い性に限定されたということか。着衣は地位の表象も担うため、特に王侯貴族の男性の装いはゴージャスに進化する。その傾向が、19世紀中葉にはたと落ち着いた。 「色や飾りにあふれた衣装が、グレーや黒を基調としたシックなものへと変わります。その代わり、彼らの妻や娘のドレスがどんどん華美になりました。男性にとって、女性に派手な格好をさせることは富を誇示する手段でもあったのです。機能的=男性服、非機能的=女性服という構図も強化されました。また、欧米では異性装を禁じる聖書の影響もあり、性差を超えた装いはタブーでした。現在、パンツなどのもともと“男性装”のスタイルを楽しめるのは、20世紀以降女性が服装の選択肢を獲得し続けてきたからです。ただ、ジェンダーレスと言っても、男性が気軽にミニスカートをはくような越境はまだ完全には広まっていないと思います。女性が装飾や非機能的な構造を引き算するよりも、男性が要素を足していくほうが、社会的・心理的ハードルが高いのかもしれません」 ●西 美弥子さん にし・みやこ>> 東京都庭園美術館学芸員。渋谷区立松濤美術館在籍時の2022年、企画展『装いの力―異性装の日本史』を担当。専門は西洋美術史。
女性からのラブコールも多数!総レースのボクサーがヒットした秘密
今メンズ肌着に革命が起きているのをご存知だろうか。コットンの黒紺グレーが一般的とされている中、「身につけることで高揚する」「全色買いました」とリピーターが多数いる品がある。〈ワコールメン〉から2021年末に発表されたレースボクサーTMだ。同ブランドのブランドマネージャーでメンズアンダーウェアを17年担当している稲積美紀さんに聞いた。 「ランジェリー売場のワクワク感を男性にも届けたいと思ったんです。メンズでは機能が満点なのは当たり前。デザインするときに心がけたのは“はいたときに感動を得られるか”。レースは、一から開発したオリジナル。力が強い男性でも着脱時に破れないようストレッチ性と強度に優れ、なめらかな質感も叶える糸を選び、はき込む深さを十分に広くした最適な幅で花柄などに設計しました。光沢糸をMIXしつつウエストゴムなので通常のボクサーと同じように違和感なく着用できるのもポイント。実は、レースは通気性がよいので、ムレが気になる男性におすすめなんです」 脚を脱毛する男の人が増えているのも、レース素材の追い風に。パールネックレスが男性にヒットしたように、美しく装うことに対する興味、関心の高さは性別を問わないという好例だ。今年3月には、フロントの立体感をなくしてマチを備えたユニセックスではけるモデルもデビューした。 「男女でお尻の形や理想とするフォルムが異なるので何度も試作を重ねましたが、結果的に満足のいく仕上がりに」 お互いによい影響を与えながらジェンダーレス化はますます加速しそうだ。 Photo_HIkari Kouki, Marisa Suda illustration_Yoshifumi Takeda Text_Motoko Kuroki, Minori Okajima
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