ついに職務停止…尹錫悦大統領「5回の談話」の恐るべきKY度
「KY」尹錫悦大統領の完全な一人芝居
ともあれ、14日夜に尹錫悦大統領は職務停止となり、韓悳洙首相が代行し始めた。韓首相が最初に行ったのは、ジョー・バイデン米大統領に報告の電話をして、変わらぬ支持を取り付けることだった。 尹大統領に関しては、憲法裁判所が180日以内に、弾劾訴追に対して「正当性」の結論を出す。「弾劾訴追は不当」と結論づければ、尹錫悦大統領は職務に復帰。「弾劾訴追は妥当」と結論づければ、直ちに失職し、60日以内に新たな大統領選挙を行うという流れだ。 韓国の場合、憲法裁判所の判断となるのは、法的根拠以上に「国民感情」である。例えば、2017年3月には、どう見ても法に照らして、朴槿恵大統領は「極めて白に近い灰色」だったのに、大統領失職を求める「ろうそくデモ」の「大声」に押される形で、失職を決定した。 今回の弾劾も、国民感情としては、圧倒的に「失職賛成」である。韓国ギャラップが13日に発表した最新の世論調査によれば、「弾劾に賛成」が75%で、「反対」は21%。尹大統領の支持率も、過去最低の11%まで下がった。こうした状況が続けば、やはり尹大統領は数ヵ月後に失職する可能性が高いと見てよいだろう。 だが今回、私は尹錫悦大統領に対して、同情する気持ちは起こらない。というのも、今回の一連の騒動は、「KY」(空気を読めない)尹錫悦大統領の完全な一人芝居であり、オウンゴール(自殺点)だからだ。大統領が突然、一人で暴れ出し、一人で転んでいったのだ。その結果、弾劾訴追を受けるのは、自業自得というものだろう。 その間、上述のように「国民向け談話」は、5回に及んだ。私はそのすべてを聞いたが、「KY」感が滲(にじ)み出ていた。 ひと言で言えば、尹大統領が思い描いている「国民の声」と、実際の「国民の声」とが、大きく乖離(かいり)しているのである。尹大統領は、「談話」によって国民の理解が得られると思っていたのだろうが、実際には「談話」を発するたびに、国民は離れていった。「談話」は尹大統領の「KY」ぶりを露呈させただけであり、すべて裏目に出る結果となったのだ。ついには、与党議員の一部まで「造反」し、弾劾訴追案が可決してしまった。