なぜJ3のFC岐阜は”問題児”の柏木陽介を獲得したのか?
岐阜は今月1日にクラブの筆頭株主として名前を連ねる岐阜市出身の実業家、藤澤信義氏が代表取締役社長最高執行役員を務めるJトラスト株式会社(本社・東京都港区)から、執行役員社長室長の小松裕志氏(33)を出向の形で、社長室ゼネラルマネージャー(GM)として迎え入れている。 柏木側へのオファーは埼玉県出身で高校時代は浦和レッズユースでプレーし、慶應義塾大学体育会ソッカー部にも所属した小松GM体制で出された。中長期的な視野に立ったチーム強化を任されている小松GMはリリースのなかで、同じ1987年度生まれの柏木への期待をこう綴っている。 「双方にとっていい結果になると確信しております。これまでの経験をピッチで発揮し、J2昇格に貢献してくれることを期待しています」 2008シーズンからJ2で戦ってきた岐阜は、2019シーズンに最下位に終わってJ3へ降格した。清水エスパルスの監督を務めた経験も持つ旧ユーゴスラビア出身のゼムノビッチ・ズドラブコ新監督のもとで、1年でのJ2復帰を目指した昨シーズンも最終的に6位に甘んじている。 今シーズンはFC東京やヴァンフォーレ甲府、カターレ富山で監督を務め、昨シーズンまではFC東京のトップチームコーチとして長谷川健太監督を支えた安間貴義氏が新監督に就任。柏レイソルひと筋でプレーしてきた33歳のGK桐畑和繁、日本代表の経験がある35歳のMF本田拓也(モンテディオ山形)、J2で250試合に出場した34歳のDF舩津徹也(ザスパクサツ群馬)らを補強した。 さらに大分トリニータから期限付き移籍で加入した2019シーズンに8ゴール、昨シーズンには10ゴールをマークしてともにチーム得点王となった、32歳のMF川西翔太が完全移籍に切り替えて残留した。急きょ加わった柏木には長短のパスの配球役だけでなく、岐阜でプレーした昨シーズン限りで引退した元日本代表のFW前田遼一が担った、濃密な経験で仲間をけん引する役割も託される。 交渉の過程では小松GMだけでなく、宮田博之代表取締役社長も柏木と直接話し合いの場をもっている。その際に岐阜県を構成する42の市町村が、チーム発足時からすべてホームタウンとなってきた歴史を説明された柏木は、市町村数にちなんだ「42」を背番号にしたいと申し出た。 「決意と感謝の気持ちを背負って戦う、という意味を込めて背番号を“42”に決め、クラブが取り組んでいる地域振興や社会貢献活動にも今後積極的に参加します。まずは『子どもたちに夢を!!』『感動を共に!!』というクラブ理念をみなさんに伝えられるようなプレーをして、恩返しの意味でもJ2昇格を実現しますので、ともに戦っていただけたら嬉しいです」