春の珍事か実力か…なぜサガン鳥栖は3連勝の開幕旋風を巻き起こすことができているのか?
開幕したばかりの明治安田生命J1リーグで、サガン鳥栖が異彩を放っている。クラブ史上初の開幕3連勝をすべて無失点でマークし、連覇を目指す川崎フロンターレと巨大補強に成功した名古屋グランパスの間に割り込む形で、2位につけるロケットスタートに成功したからだ。 昨シーズンは開幕から5試合続けて無得点と決定力不足にあえいだチームが、10日のベガルタ仙台との第3節ではクラブ史上で最多タイとなる5ゴールをあげて快勝した。2018、2019シーズンとぎりぎりでJ1に残留し、昨シーズンは13位だった鳥栖に何が起こっているのか。 鳥栖の躍進はJ1を戦う20クラブの指揮官で最年少となる、39歳の金明輝監督の存在を抜きには語れない。2018、2019シーズンはいずれも途中登板し、前任者のもとで不振に陥っていた鳥栖を残留させた。始動から初めて指揮を執った昨シーズンは新型コロナウイルス禍で長期中断と過密日程を強いられ、8月には鳥栖でも金監督自身を含めた集団感染が発生して活動停止を余儀なくされた。 もっとも、昨シーズンに残したデータを詳しく見ていくと、今シーズンにつながる数字が浮かび上がってくる。歴史的な独走劇で頂点に立った川崎と2戦2分けと、負けなかった唯一のチームである鳥栖の総失点は「43」で、リーグで7番目に少なかったが、実は被シュート数そのものも「310」で川崎、名古屋、鹿島アントラーズに次ぎ、サンフレッチェ広島と並んで4番目に少なかった。 この「310」が何を意味するのか。自陣に引いて身体を張って守るのではなく、高い位置からプレスをかけ、ボールを失ってもすぐに奪い返す戦法に、昨シーズンから取り組んできた跡となる。シュートを打たれる機会が減れば、必然的に失点も少なくなる。金監督は仙台戦後にこう語っている。 「ファン・サポーターの方々はサガン鳥栖が守る姿ではなく、攻める姿を、得点する姿を見に来てくださっている。そういうファン・サポーターの思いを、選手たちが表現してくれている」 昨シーズンは[4-3-3]を主戦システムとしたが、今シーズンは開幕戦からオプションと位置づける[3-3-2-2]で臨んでいる。2トップ、2人のインサイドハーフ、そして左右のウイングバックがさらに高い位置からプレッシャーをかけ、素早く攻撃に移る形が奏功していると指揮官は言う。 「後ろのビルドアップが安定していることで、前へ人数をかけて相手を押し込み、クロスに対しても求める場所ごとに入っていけていることで、おのずと得点機が創出されているのかな、と」 オフにはMF原川力(セレッソ大阪)、DF原輝綺(清水エスパルス)、DF森下龍矢(名古屋)らの主力がチームを去った。一方でシーズン途中に横浜F・マリノスから期限付き移籍で加わっていたGK朴一圭を完全移籍で獲得し、韓国代表歴のあるDFファン・ソッコも清水から加わった。