難聴を放置すると認知症になる可能性が上がる?!でも補聴器は高いのにうまく使えない…眼鏡との違いは?
WHOの発表によると、2050年までに世界で4人に1人、約25億人が難聴になり、その経済的損失は年間9800億ドル(約133兆円)と試算されています。 【図】補聴器と眼鏡、使いやすさ、何が違う? また、「認知症全体の40%は予防が可能」だとした、世界をリードする認知症の専門家からなるランセット委員会の発表では、「予防しうる認知症」の最大のリスク要因(8%)は難聴だと示されました。また、難聴を放置することによって脳の容積が減少するという報告もされています。近年は高齢者だけでなく、若者のイヤホン使用による難聴の問題も指摘されています。 難聴の程度が高い高齢者ほど認知症になる可能性が高いものの、補聴器を使用している人は、使っていない人に比べて認知症になる可能性が低いという研究結果も昨年、ジョンズホプキンス大学・ブルームバーグ公衆衛生大学院から発表されています。(*) しかし、世界に先駆けて高齢化が進んでいる日本では、補聴器装用率、満足度共に他の先進国よりもかなり低く、難聴の診断・介入を受けずに放置している人の数が、諸外国と比べてとても多いのです。なぜなのでしょうか。
この大きな原因となっている、補聴器に対する「高価なくせに少しも聞き取れない」「ないよりはマシだけど…」という悪い評価は、実は正しいものとは言えないと、慶應義塾大学病院 聴覚センターの大石直樹先生は話します。 かければすぐ見える眼鏡と同じように、補聴器もかけてすぐ聞き取れるものであると思われがちですが、これが間違い。まず、補聴器と眼鏡は違うものという認識が必要なのです。 眼鏡と違い、聞き取れるようになるために、補聴器はつけるだけでなく、調整と脳のトレーニング「聴覚リハビリテーション」が必要となります。人は、耳で聴いているわけではなく「脳で聴いている」からです。一度難聴になってしまった脳は、補聴器をつけさえすればすぐに使えるわけではないからです。 難聴の脳に、最初から聞き取りに必要な大きな音を入れると、脳はとても不快に感じてしまいます。そのため、聞き取りに十分な大きさになるまで、少しずつ音を大きくしていき、時間をかけることで脳の不快感を減らし、正常な脳に近づける「きこえ脳のリハビリテーション」=「聴覚リハビリテーション」が必要となるのです。
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