STEAM交え理系女性活躍やジェンダーギャップ解消めざす教育を(日本女子大学理事長・今市涼子さん)
中学校・高等学校では、将来どのような分野に進んでも必要となる確かな学力を身に着ける事を目的に、文理を分けないカリキュラムで全ての領域の基礎をバランスよく学びます。数学では統計学などのデータサイエンス、理科では大学と連携した探究活動、情報では教科横断型集中授業、芸術では大学教員による事前授業を受ける歌舞伎や能楽の鑑賞など、特徴的な授業が多数あります。理学部によるサマースクールや天体観測などでも直接大学教員の指導を受ける機会があります。
理系女子学生、奪い合いより母数の確保に目を向けて
―東京商工会議所にも関わっておられます。首都圏の私学で生き残りをかけることについてどのようにお考えでしょうか。
商工会議所では、議員として教育・人材育成委員会の共同委員長及び東京の将来を考える懇談会の委員等も務めています。日本女子大学は2027年度には経済学部(仮称)の開設を構想していますので、議員活動を通して女性のアントレプレナーシップ(起業家精神)についても考えていきたいです。
現在、理系の女子学生に入学してもらおうと、「女子枠」を設ける大学も現れています。国公立も私大も盛んに理系の女子学生を確保しようと意欲的です。そのため、首都圏の理系学部は「女子学生の奪い合い」になっているのは事実です。しかし、本来、理系女子学生の母数を確保することに目を向けるべきです。早い段階からSTEAM教育に触れ、ジェンダーバイアスのない環境で、のびのびと自由に好奇心のままに学びを広げ深める経験はそのきっかけになるはずです。一貫した女子教育の強みを今後も磨き上げ、理系分野で活躍する女性を生涯通してエンカレッジできる学び舎でありたいですね。
滝山展代/サイエンスポータル編集部
プロフィール
今市涼子(いまいち・りょうこ) 学校法人日本女子大学理事長/植物学者(専門は植物形態学) 1948年東京生まれ。71年日本女子大学家政学部家政理学科Ⅱ部(生物・農芸専攻)を卒業後、千葉大学理学部文部技官を経て、お茶の水女子大学理学研究科生物学専攻の修士課程を修了。玉川大学農学部勤務中の83年、京都大学で理学博士取得。2020年から現職。22年からは東京商工会議所の1号議員・特別顧問も務める。