東電、福島第1原発2号機の燃料デブリ回収 事故から13年半で初
東京電力は7日、福島第1原発2号機の溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の試験取り出しで、試料の回収を完了したと発表した。 燃料デブリの回収は原発事故から13年半で初めて。最長40年続くとする廃炉で最難関の緒に就いた節目となる。 燃料デブリは1~3号機に計880トンあると推計される。政府と東電は廃炉の完了までにすべて回収する計画だ。ただ、今回の回収量は数グラムにとどまる。廃炉が完了できるかは依然見通せない。 今回の試験取り出しは、格納容器の内部に通じる穴から釣りざお式の取り出し装置を挿入。装置の先端部分を、原子炉を支える土台(ペデスタル)の底に垂らし、先端の器具で試料をつかんで引き抜くという工程だ。 東電はこの日までに、試料を格納容器の外にある収納箱まで引き抜いて放射線量を測定。作業員の被ばく対策として設定した毎時24ミリシーベルト以下で、回収可能であることを確認した。 そしてこの日、容器に収めた試料を収納箱から取り出し、遮蔽(しゃへい)機能がある別の専用容器に入れ、回収を完了した。試料は大きさ約5ミリ、重さは最大3グラムとみられる。今後、茨城県内の分析施設に送り、詳細に分析する。 東電は当初、2021年中に試験取り出しを始める予定だったが、装置の不具合などで3回延期された。東電は、ロボットアームからより構造が単純な釣りざお式に装置を変更。8月22日に着手し、9月上旬ごろに取り出す工程を組んだ。 しかし、高い放射線に阻まれて作業は難航した。装置を押し込むパイプの接続ミスや、カメラの故障などのトラブルが続き、2カ月弱遅れて完了した。 東電は今後、さまざまな場所へ動かせるロボットアームも使い、さらに試料の回収を試みる。得られたデータは、今後の取り出し規模の拡大に活用するとしている。 ただ、大規模に取り出す工法は3号機では検討が進んでいるが、1、2号機では決まっていない。【高橋由衣】 ◇燃料デブリ 原発事故で冷却できなくなった高温の核燃料が、原子炉内の構造物を巻き込みながら溶け落ち、冷えて固まったもの。極めて強い放射線を出し、人は近づけない。冷却水などが流れ込んで触れ、汚染水が発生する要因になっている。性質や状態、どこにどれだけあるかなどの全容は分かっていない。