STEAM交え理系女性活躍やジェンダーギャップ解消めざす教育を(日本女子大学理事長・今市涼子さん)
―研究室では学生にどのような働きかけをしてきましたか。
「今、あなたにとってプライオリティ(優先順位)の最も高いことは何か」と言ってきました。時間には限りがあります。日本女子大学では全学部で卒業論文や研究もしくは、卒業制作を必修にしているのですが、各自が、その都度プライオリティを決めて進めていかないと終わらない。
それが完成すると「自分はできるんだ」と自己肯定感を持って卒業していくんですね。卒後の生活でも「先生の『今のプライオリティは』が役に立った」と卒業生に言われます。卒業生は多くの企業で活躍していますが、女子大卒って、女性のネットワークづくりがうまい人が多い、と企業から言われます。リーダーシップを取っていける人はフォロワーシップにも長けていますから、仲の良さは助け合いにもつながっているのでしょう。
幼稚園から中高まで大学の知見も活用したSTEAM教育を展開
―2020年に理事長に就任し、キャリア教育やグローバル教育に加え、STEAM教育にも力を入れるようになったとのことですが、なぜ今、STEAM教育が大切とお考えでしょうか。
日本女子大学の創立者の成瀬仁蔵は、1901年の大学校創立時から自然科学を重視しました。「4大発明をはじめとする自然科学こそが世界の発展となる。自然科学を十分に理解することこそが、全ての基礎となり、精神の自由をももたらす」と考えていたのです。これが、今の本学のSTEAM教育につながっています。
本学は幼稚園から大学院まで備えていますが、STEAM教育を一貫教育の柱の一つとして、実物教育を重視し、大学の知見を活用した学習を各附属校園に取り入れています。
幼稚園では、STEAM教育のスタートと位置付け、あくまでも遊びを中心として、感性を育む保育を教育方針としています。造形制作では、絵の具をつけたビー玉を転がしながら、本学名誉教授の指導のもとで大きな絵を自由に描いたり、顕微鏡などの機器も使い、栽培している野菜についている虫などを観察したりします。子ども達が新しい世界を知る喜びで得た体験は、小学校の実物教育への学びへとつながっていきます。