海の竜巻はどれくらい危険なのか? 豪華ヨットがおそらく沈没、専門家に聞いた
英起業家マイク・リンチ氏死亡事故の原因か、温暖化で増えるおそれも
英国のテック起業家マイク・リンチ氏を含む22人を乗せた豪華ヨットが現地時間で8月19日未明、イタリアのパレルモ沖で沈没した。 【動画】危機一髪!車に迫る巨大竜巻 全長56メートルの「ベイジアン」号は「海上竜巻(水上竜巻)」の直撃を受けたと考えられている。一部の専門家は、急速に温暖化している地中海などの海域では、気候変動の影響で海上竜巻が発生しやすくなるのではないかと懸念している。 ここでは、海上竜巻について知っておくべきこと、温暖化は本当に海上竜巻を増加させるかどうかについて説明しよう。
海上竜巻とは? なぜできるのか
海上竜巻とは、海で発生する竜巻のことだ。「竜巻は自分がどこにいるかなど気にしません」とカナダ、オンタリオ州にあるウェスタン大学で竜巻について研究を行う「ノーザン・トルネード・プロジェクト」事務局長であるデイビッド・シルズ氏は話す。「そこが都市であれ、森林であれ、農地であれ、水上であれ、竜巻は自分の仕事をするだけです」 空気の渦巻きである竜巻は「空気の境界が存在する場所、例えば、暖かい空気と冷たい空気がぶつかる場所で形成されます」とオーストラリア気象局(BOM)はメールで説明する。 異なる高度で風向きが変化すると、空気の回転が発生することがある。 「海面近くで風が一方向に吹いているとしましょう」と英レディング大学の気象学者ピーター・イネス氏は話す。上層の風が別方向に吹くと、「2つの風の境界で、空気が水平に回り始めます」 下層の暖かい風は上昇し、「その過程で、回転する空気の塊も上昇して引き伸ばされ、海面のところでは渦が生じます」とBOMは説明する。 イネス氏によれば、空気が渦に吸い込まれて上昇すると、風呂の栓を抜いたときのように回転が激しくなる。「排水口に入った水は、下方向に吸い込まれるため、とても激しく回転します」 シルズ氏はフィギュアスケーターに例える。「腕を体に引き寄せると、回転がどんどん速くなります」