日銀・黒田総裁会見4月28日(全文2完)好循環下で2%目標の安定的実現を目指す
インフレ期待の持続性はあるのか
ブルームバーグ:すいません、ブルームバーグの伊藤です。2点お願いします。今回の展望レポートではインフレ期待についても短期を中心に上昇していると、そういう判断を引き上げているわけですが、その起点がコストプッシュの物価上昇を受けてのものだと思うんですが、コストプッシュの物価上昇であってもインフレ期待の持続性はあるのかどうか、価格転嫁とか賃金上昇、その辺を期待できるのかどうか、総裁のお考えをお願いします。 あともう1点なんですが、先ほど指し値オペの明確化について、市場の臆測を払拭して変動を抑制するためと、そういうふうにご説明されたんですが、むしろこのYCCの厳格な運営自体が過度な円安とか変動を招いて先行きの不確実性を高めているということは考えられないのか、その辺について総裁のお考えをお願いします。 黒田 :インフレ期待については、今回の展望レポートでも明らかにしているように、それからいろいろな指標でご覧になって分かるように、明らかに短期のインフレ期待が上昇していると。これはいわゆるアダプティブな期待形成ということで、足元、国際資源価格の上昇を反映して、ガソリン価格とかその他が上昇してるっていうことを反映して短期のインフレ期待が上昇してるってことだと思います。
コストプッシュだけで物価が上がる状況だと持続しない
そういう意味で、現状、確かに、コストプッシュによる物価上昇を反映して、短期のインフレ期待が上昇しているということですので、先ほど来、申し上げているように、実際の物価上昇率が資源価格がずっと上がっていくと、高止まりでももうそれで、それ以上インフレ率を維持する要素になりませんので、むしろ物価上昇率は下がっていくわけですね。しかも、わが国の場合は資源輸入国ですので、資源価格の上昇が所得の流出につながるということで、むしろ経済を下押しし、物価を下押しするという影響がありますので、そういう意味ではコストプッシュだけで物価が上がっている状況だと持続せず、物価上昇率は下がっていきますし、その意味でインフレ期待も下がってしまうということになると思います。 ただ、今回の展望レポートでも示しましたとおり、除く生鮮・エネルギーの状況を見ますと、これはまさにエネルギー価格の上昇、コストプッシュによる上昇の影響でなく、基本的な経済の回復、デフレギャップの縮小からプラスに転化する、消費や設備投資が伸びていくという中で基礎的な物価の上昇率が緩やかに高まっていくということを示していますので、こういう状況である程度、インフレ期待にもプラスになると思いますが、ただそれでも物価上昇率、消費者物価全体、あるいは除く生鮮でも、今年度の1.9%から来年度は1.1%に下がっていくという見通しでありますので、なかなかインフレ期待が十分高まっていくというほどではないというふうに思います。 ただいずれにせよそれは短期のインフレ期待が、今、上がっているのは確かにコストプッシュのあれですけども、それは持続しませんので、その後の物価上昇とかインフレ期待っていうのはあくまでも、景気が回復し、需給ギャップが縮小して、プラスに転じて、経済が順調に回っていくと。好循環が続くという中でそういうことが起こり得るっていうことで。ただそこに至るまでまだかなり時間がかかるっていうことは認めないといけないといけませんけども、別にコストプッシュのインフレで、インフレ期待が高まってそれがどんどんずっと持続していくということにはならないというふうに思います。