伊藤英明、事務所独立「自分のキャリアに自信がない」50歳目前の葛藤と覚悟
いい年の取り方とは?「老いは自分に自信をつける行為」
――伊藤さんの「自信がない」という告白は意外でしたが、ミッドライフ・クライシス(中年の危機)という言葉があるように、50歳を目前にした同世代の人々も、生き方やキャリアについて悩んでいるかもしれませんね。 伊藤英明: 僕は人様に助言できるような人間ではありませんが、一番足りなかったのは覚悟だなと反省しているんです。自分はたいした努力もしてないし、やらないにもかかわらず、できないことを人のせいにしちゃう。本当に都合がいいんですけど、成功したら自分のおかげ、他人の力じゃないと勘違いしている時期がありました。 だけど恩人・明男さんを失って、家族を持って立たされたとき、自分の嫌な部分を見ないようにしていたことに気づきました。自分を見つめ直し、自信はないけれど、やるしかないと思ったんです。今からでも遅くないと、自分を鼓舞しています。子ども時代の闘病経験を思い出して、初心にかえったりもしています。 僕が俳優に憧れたのは、通算3年間の入院生活がきっかけなんです。テレビを見ることと妄想をすることが、つらい闘病生活から現実逃避する手段でした。病室のベッドをコックピットに見立ててパイロットになったり、船長になったり。テレビでやっていた映画「敦煌」の西田敏行さんが、甲冑を着て大群に突っ込んでいくシーンがかっこいいと感激して、いつか自分もやってみたいと夢見ていた。それが今につながっている気がします。 ――「俳優・伊藤英明」の根幹には、そのような体験があったのですね。 伊藤英明: いつか僕の演技で、昔自分が入院していたときのような子どもたちを感動させることができたら最高ですね。僕は自分のわがままでまわりをいっぱい傷つけてきたけれど、これからはそこから逃げるんじゃなくて、こんなバカな俺でも人に感動を与えられるんだよ、というのを見せたいです。失敗や愚かさもいつか自分の糧になる。そういう意味では、僕にとって俳優はすばらしい仕事。つらかったことうれしかったことを、自分の役が来たときに、それに厚みを持たせて表現できたらいいなと思います。 ――50歳以降は、どのような年の取り方をしていきたいですか。 伊藤英明: 最近息子と、「帰ってきたあぶない刑事」という映画を見たんです。息子もすごく喜んでいたし、僕も舘ひろしさんや柴田恭兵さんを見て、こんなふうに俳優として年齢を重ねていけたらいいなと。いい年の取り方を考えさせられましたし、すごく前向きになれたんです。老いていくっていうのは、自分に自信をつける行為なんじゃないのかなと思いました。失敗や成功が、すべて自信になっていく。それはもしかしたら、僕の仕事にもいい影響を与えてくれるんじゃないかと期待しています。 ==== 伊藤英明 1975年8月3日、長崎県佐世保市生まれ、岐阜県育ち。1993年、第6回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞する。1997年、日本テレビドラマ「デッサン」で俳優として始動し、「海猿」シリーズでは劇場版・ドラマ版ともに主演を務めた。1997年~2022年、小笠原明男が創業したA-Teamに所属したのち、2022年にグランパパプロダクションに移籍。2024年7月より独立し、個人事務所ID4マネージメントを設立。伊藤英明公式HP:https://hideakiito.com ==== Yahoo!ニュースVoiceでは、“40~50代で感じる悩みやモヤモヤ”について、あなたの体験を募集しています。本記事にコメントを投稿してみませんか? ※後日、Yahoo!ニュース内コンテンツにて、いただいたコメントを取り上げさせていただく場合がございますのでご了承ください。