「悩んだら一度手放してみるのもアリ」“キャプ翼”に救われた中村憲剛が語る挫折と再燃
2026年北中米W杯出場をかけたアジア2次予選が目前に迫っている。かつて日本代表としてW杯にも出場した経験を持つ元サッカー選手の中村憲剛さんは、小学生の頃から注目を集めるプレイヤーだったものの、中学入学後に挫折を覚え、一度サッカーから離れた時期がある。その経験を振り返り「辛いなら1回やめてもいい」と語る中村さん。挫折を乗り越える助けになったのは漫画『キャプテン翼』の存在も大きかったという。辛い時期をどう切り抜け、プロサッカー選手として第一線で活躍できたのか、話を聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
「自分以外の選手に期待が移っていくのが怖かった」サッカーから離れた中学時代
――中村さんは、これまでの人生で挫折を味わった時期はありましたか。 中村憲剛: 小学生の頃、僕は体がすごく細くて背が低かったんですけど、周りと体格差がそれほどなかったので、すばしっこさを生かしたプレーができたんですよね。ただ、小学校高学年で東京選抜に選ばれたときに、他の選手たちに全然太刀打ちできなくて……。「世の中には良い選手がたくさんいるんだ」「こういう選手たちが将来日本代表になるんだろうな」と、ガクンと落ち込みましたね。 そんな少し暗い気持ちを抱えたまま中学に上がると、周りは成長期でどんどん背が伸びて、足が速くなっていったんです。僕はあまり体格が変わらなかったので周囲の変化に対応できず、自分のプレーができなくなってしまいました。小学生の頃は、1人でドリブルで抜いていくタイプだったのですが、その武器がなくなってしまったんです。 ――当時は、特にどんなことが辛かったのでしょうか。 中村憲剛: それまでは、僕がゴールを決めると家族や周りの人たちが喜んでくれるのがたまらなく快感だったんです。自分で点を取ってチームを勝たせるという立ち位置が、他の選手に移っていくのを横目で見るのは辛いものがありました。自分に寄せられていた期待が、他の人に移っていくのはめちゃくちゃ怖かったです。 それで中学1年生の夏前くらいに、僕は一度サッカーをやめました。通っていたクラブチームをやめ、中学のサッカー部にも入らず1人でボールを蹴っていました。好きなことを続けられなくなったという意味では、それが一番大きな挫折だったと思います。