「何でもやってあげる必要はない」認知症を公表した蛭子能収のマネージャーがあえて“手を貸さない”理由 #病とともに
急速な高齢化に伴い、日本における認知症高齢者の数は2025年に約700万人となることが見込まれている。認知症のある人が増えるということは、それを介護する人も増えるということだ。漫画家・蛭子能収さんは、2020年にレビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症を併発していることを公表した。そんな蛭子さんを20年間マネージャーとして支えている森永真志さんは、「仕事は続けたい」と言う蛭子さんを献身的にサポートしている。自身も父親の認知症介護の経験があり、「自分の心に余裕がないと他人をケアできない」と語る森永さんに、蛭子さんとの向き合い方について話を聞いた。(Yahoo!ニュース Voice)
最初は奥さんからのSOS。少しずつ積み重なった違和感
――蛭子さんが認知症だと気付いたきっかけを教えてください。 森永真志: はじめは蛭子さんの奥さんからの相談でした。「夜中に何回も起きたり、トイレの場所が分からなくなったりする」とのことで、仕事の時は問題ないかと聞かれ、ある日のことを思い出しました。地方ロケで1泊2日での撮影があったんですが、その日、仕事が終わって先に蛭子さんだけホテルに帰ったんです。その後、スタッフだけで食事をしていると蛭子さんから電話があり、「俺、先に家に帰ったから」と言いだして。地方から東京に帰ったかと思ってめちゃくちゃ焦ったんですが、電話を繋いだまま蛭子さんのホテルの部屋に向かってみると、実際はちゃんとホテルにいて、蛭子さん自身も「わぁ~!」と驚くみたいなことがありました。蛭子さんは、普段からちょっと忘れっぽいところはあるなと思っていたんですが、そういう違和感が少しずつ積み重なっていきました。 ――蛭子さんの認知症の公表に至った経緯を教えてください。 森永真志: 普段からシャキッとしている人が、ちょっとおかしな言動をとったら、それがすぐにサインになると思うのですが、蛭子さんは元々“今日が何曜日”とか“他人の名前”とか、別にどうでもいい人なんです。なので、人によっては認知症に気付きにくいケースもあると痛感しました。ただ、今はSNSが発達している時代なので、症状がさらに進行して「蛭子さん、ちょっとやばいだろ」とか「もうかなりボケてるんじゃないの?」と、変な感じで伝わってしまうのが事務所的にも奥さん的にも嫌だったんです。それで、番組を通じて「レビー小体型認知症」と「アルツハイマー型認知症」を患っていることを公表することにしたんです。 ――公表後の世間の反応はいかがでしたか。 森永真志: 「頑張れ蛭子さん」みたいな温かいコメントが多くてありがたかったです。蛭子さん本人も、「仕事をし続けたい」ということだけは、はっきり言います。お医者さんからも「仕事はし続けないと、認知症の進行が早まる可能性があります」とも言われていました。なので、認知症関連の講演会に登壇したり、昨年9月にはアート展を開催したりと無理のないペースで今も仕事は続けています。 テレビ出演に関しては、認知症の蛭子さんがかわいそうに見えてしまうと、テレビには出づらいんじゃないかと思います。そういう意味では、有吉弘行さんがそこら辺のさじ加減が抜群に上手いんですよね。尊敬しつつ、愛ある毒を吐くみたいな。そのスレスレをできるのは多分、有吉さんしかいないと思います。蛭子さんは有吉さんがテレビに出られていない時期でもずっと変わらず同じように接していたので、もしかしたら恩義を感じて、今でもご自身の番組に蛭子さんを呼んでくれているかもしれません。有吉さんの蛭子さんへの接し方は、見ていてすごく勉強になります。