入居者同士や地域住民との交流が活発な賃貸マンションが人気を呼んでいる理由
共有スペースなどでイベント開催
建物の共用部や併設のカフェなどで、入居者同士や地域住民との交流を活発に行うマンションなどが人気だ。周囲とのつながりが希薄になりがちな賃貸住宅でも、日常生活の中で交流を広げられる点が受け入れられているという。 「トリック・オア・トリート!」。10月下旬、川崎市のマンション「フロール元住吉」で行われたハロウィーンイベントでは、仮装した親子連れ16世帯が、共有スペースで記念撮影などを楽しんでいた。 その様子を温かく見守るのが常駐する管理人「守人」の中村優希さんだ。企画した入居者の尾崎ちささん(36)は、「守人さんが声掛けなどをしてくれて交流の輪も広がり、今年で3回目。皆が楽しそうでよかった」とほほえんだ。 この建物は神奈川県住宅供給公社が2020年、古い団地を6階建て総戸数153戸の賃貸マンションに建て替えた。これまでも、同公社が運営する賃貸住宅で、交流イベント開催などの取り組みを行ってきたが、「参加者が固定される」などの課題があった。同マンションでは、コミュニティー作りなどを専門とする企業「HITOTOWA(ヒトトワ)」(東京)に管理人業務を委託し、入居者同士の交流を後押しする。 取り組むのはマンション内だけでなく、地域全体に溶け込むコミュニティー作りだ。この日はマンション内に併設されたカフェでも連動イベントを実施。地域の親子連れも参加してバルーンアートなどを楽しんだ。同公社の担当者は「マンション内外の人とふれあえる仕掛けが孤立の緩和や安心感につながれば」と期待する。 不動産会社「グローバルエージェンツ」(東京)は、「ソーシャルアパートメント」と名付けた隣人交流型賃貸マンションを全国で約50棟運営している。同社によると、10年前の2倍近くに棟数を増やしており、平均稼働率が95%と高い水準で推移する。今年7月、入居者間だけでなく、系列物件の入居者とも趣味を通じてつながることができる専用アプリの新機能も公開した。 リクルートの不動産・住宅情報サイト「SUUMO(スーモ)」副編集長の佐々木綾香さんによると、交流を重視した賃貸住宅は「コミュニティー賃貸」などと呼ばれ、「他者との交流が難しかったコロナ禍を経て、地域の顔見知りを作ることや周囲との交流の重要性を感じる人が増えているのでは」と話す。また、近年の防災意識の高まりから、賃貸住宅でも「共助」の必要性が認識され、入居者同士だけでなく、地域内での交流も重要視される傾向があるという。