第159回芥川賞受賞会見(全文)高橋弘希さん「だいぶ読みやすいと思います」
4回目の候補入りでどういう心境だったのか
毎日新聞:おめでとうございます。毎日新聞の大原と申します。おめでとうございます。4回目の候補入りでどういう心境だったでしょうか。期待されてましたでしょうか。 高橋:別に期待は特にしてないですけど、なんですかね。普通に待ってました。 毎日新聞:どのような状況で今日はお待ちだったんですか。 高橋:ん? どのような? 毎日新聞:どなたと。 高橋:担当の編集の人といました。 毎日新聞:ご自身が受賞するという、期待はされてなかったというか。 高橋:期待っていうか、どうなるか分からないですからね。どうかねという感じですけど。 毎日新聞:自信はおありだったんでしょうか。 高橋:自信というか、なんですかね。読んだ人がどう思うかっていうのは分からないんで。作品はいいんじゃないと思いますけど、それを人がどう読むかっていうのは分からないので、そういう自信はあまりないですけれども。
選考員の講評で「非常に読みにくい」と言われたことについて
日本経済新聞:日経新聞の【ゴウハラ 01:56:12】と申します。おめでとうございます。 高橋:ありがとうございます。 日本経済新聞:受賞の決定の講評、選考員が出てきての講評の中に、高橋さんの今回の小説が非常に読みにくいという小説であったというふうな言葉がありました。ただ、以前取材をさせていただいたときに、高橋さんは自分の小説、文章を評して、自分の文章っていうのは非常に分かりやすいものだとおっしゃってたことがあります。今回、非常に読みにくいといわれたことについてどういうふうに思いますか。 高橋:どう思う? いや、でも読みにくくはないと思いますけどね。だいぶ読みやすいと思いますよ。 日本経済新聞:その表現のことでもう1つなんですが、高橋さんの小説、最初の『指の骨』からいわれていたことですが、非常に描写が正確で、小説の、言ったら基本にあるような描写っていうものがすごく魅力があるということでした。今回も、例えば少年たちの動きの中に挟まれてくる自然描写、例えばイネだとかセミだとか、そういったものの描写っていうのは、適宜非常にビビッドに折り込まれてきてましたけど、そこら辺は、今回は非常に意識して書かれていらしたんでしょうか。 高橋:いや、別に意識はしていないですけど、舞台が田舎なんで、その場所がどういう感じかなっていうのは書かないと分かんないんで、別に自然とそうなりましたっていう感じなんですけどね。 日本経済新聞:高橋さんは客観的な描写に、登場人物の、例えば心境だとかそういったものを象徴的に込められるほうですか。 高橋:ん? 客観的な描写に? 日本経済新聞:はい。その自然描写の中に登場人物の心だとか気持ちっていうものを象徴させるほうですか。それとも純粋に物事を描写するほう? 高橋:でも、なんですかね。でも、描写するっていうことはたぶん何かしらの、作品内で何か意味があるはずなんで、なんですかね。象徴しているかどうかは分かんないですけど、なるべく意味があるような描写を心掛けておりますけれども。 司会:ではそちらの黒いシャツの方。