没頭し最高の能力が発揮できる「フロー状態」、燃え尽きずにうまく乗りこなす方法
大好きなことに夢中になり、数時間を数分のように感じる時を想像してみてほしい。 仕事だろうが創作だろうが、そんな時には、自分が最高の能力を発揮し、すべてがうまくいき、自分のしていることにひたすら没頭している感じがする。こうした状態を「フロー(Flow)」と呼ぶ。集中力、スキル、生産性が完璧に噛みあった、強力なメンタルゾーンだ。 フロー状態は、ウェルビーイングやパフォーマンスに良い影響をもたらすが、ときには、不健全な強迫に陥る場合もある。「最高のパフォーマンス」の追求に夢中になりすぎると、エネルギーを消耗し、境界が曖昧になりはじめ、メンタルヘルスが打撃を受ける可能性があるのだ。 かつては喜びと達成感をもたらしていたものが「フローの罠」に変わり、終わりのない追求のサイクルにはまりこんでしまうのだ。フロー状態は、力をもたらす一方で、偽りの無敵感を生み、心の疲弊という罠に引きずりこむこともある。 『International Journal of Environmental Research and Public Health』で発表された2022年の研究では、フロー状態はしばしばウェルビーイングや、「燃え尽き(バーンアウト)の抑制」と結びついているものの、その関係は複雑であることが裏づけられている。フロー状態にのめりこみすぎると、仕事中毒になったり創作にとりつかれたりして、ストレスを和らげるどころか、それを生んでしまうことになりかねない。 どんなときに情熱(パッション)が強迫に変わるのかを知り、バーンアウトに陥る前に自分のバランスを整えるにはどうすればいいかを見ていこう。 ■1. 情熱だけが達成感の源になっているとき 情熱は成功と生産性を後押しするが、人生に不可欠なほかの要素に影を落としはじめることもある。『Journal of Personality』で発表された2015年の研究によれば、情熱には「調和性パッション」と「強迫性パッション」という2つのタイプがあるという。 調和性パッションは、人生におけるほかの優先事項を押しのけずに、バランスのとれたかたちで情熱を注いでいる状態だ。それに対して強迫性パッションは、情熱だけに頼って感情的・心理的なニーズを満たしているせいで、それをせずにはいられない状態にまで駆りたてられる。 仕事や趣味、あるいは何かのプロジェクトに対して強迫性パッションをもつと、自分の優先事項が次第に変化し、人生のほかの大切な面をおろそかにしがちになる場合がある。