コンビニで進む「レンジでチン」革命――もうおでんは1日で捨てない
低価格で、フードロスも削減
試行錯誤の末にできあがったのは、ナポリタン、ボロネーゼ、カルボナーラなどの定番のパスタ。1500Wのレンジで2分前後温めれば、主食としてボリューム十分なパスタが食べられる。コンビニのお弁当コーナーで存在感を発揮しているパスタと比べても、引けはとらない。
値段は税抜きで238円。量が違うので一概に比較はできないが、コーヒーチェーンなど、ちょっとした飲食店のパスタよりも安い。消費者から見れば、ここはうれしい。
鍵村さんはこうも言う。 「解凍したときに食感がうまく戻りにくい、冷凍適性に乏しい素材が、今では急速凍結の進化で、解凍後も食感をキープできるようになってきました。今後、さらに品質の向上が可能になれば、もっと多様な商品もつくれるかもしれません」 鍵村さんは「冷凍食品の売り上げは、年々伸長しています。品質向上や使い勝手の良さの認知をさらに広げたい」とも続けた。
セブンだけでなく、コンビニ業界全体でオリジナルの冷凍食品開発が進んでいることから、その伸び代は大きい。 平成のある時期まで、コンビニの“レンジでチン文化”は、「弁当を買って、その場ですぐ食べる」という便利さを世の中に提案し、定着した。それがいま、フードロスや業務の省力化、また共働き世帯や単身世帯の増加で出てきた調理の「時短」「簡便性」という新しいニーズに応じて変化の時を迎えた。 チルド惣菜、冷凍食品――これまでヒットとはあまり縁のなかったカテゴリーにスポットを当てた令和時代のレンチン革命は、コンビニグルメの常識を覆し、食の風景を変えようとしている。
吉岡秀子(よしおか・ひでこ)
北海道生まれの大阪育ち。関西大学社会学部卒。2000年ごろからコンビニ取材をはじめ、以来、商品・サービス開発の舞台裏やコンビニチェーンの進化を消費者視点で追い続け、各メディアで情報発信している。近著に『コンビニ おいしい進化史』(平凡社)。著書に『セブン-イレブン 金の法則』(朝日新書)などがある。