【有馬記念】史上初「5歳での秋古馬三冠制覇」に挑むドウデュース 好データ合致の“先輩”ダービー馬シャフリヤールも侮れない
あえて逆転候補に指名するなら
およそレースの輪郭をつかんだところで、ここからは前走レースを中心にドウデュースと、打ち負かすライバル候補を探っていく。 前走ジャパンCは1着【0-1-1-3】複勝率40.0%で、連勝した馬がいない。ジャパンC創設後、有馬記念との連勝はシンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ゼンノロブロイ、ディープインパクトの4頭のみ。うち2頭は無敗の三冠馬、残るは秋の古馬三冠を達成。すべて4歳だった。 ジャパンC組で好データは4着【2-0-2-1】だが、該当するチェルヴィニアは出てこない。ほかでは5着【0-1-1-1】のジャスティンパレスまでがギリギリだ。6着以下になると【0-0-0-30】。ジャパンC大敗から中3週で反転するのは容易ではない。 前走天皇賞(秋)は【3-2-1-11】勝率17.6%、複勝率35.3%でジャパンCより良い。近年の有馬記念は3歳か、ジャパンCスキップがトレンド。ただし、3着以内【3-1-1-3】、5着以下【0-1-0-8】(※同4着はサンプルなし)。スキップといっても、好走が前提となる。 3着のホウオウビスケッツは除外対象であり、6着ベラジオオペラはデータ上、厳しい。GⅠ昇格後の大阪杯勝ち馬はその年の有馬記念で【1-0-0-3】、3頭は不出走。勝ったのは昇格元年のキタサンブラックだけだ。 前走菊花賞は【2-2-2-9】勝率13.3%、複勝率40.0%で、2着以内は【1-1-2-2】。4着以下【1-1-0-3】と、敗退から巻き返す場面もなくはない。菊花賞馬アーバンシックと同6着ダノンデサイルは京成杯2、1着馬。中山で結果を残している。逆転候補には入れたいが、ドウデュースを上回れるかどうか。 5歳馬の着順傾向を調べてみる。データがある1986年以降まで範囲を広げると、前走1着は【1-1-3-20】勝率4.0%、複勝率20.0%。やはり連勝は簡単ではない。勝ったのはコックスプレートと連勝したリスグラシューのみだ。こう見るとドウデュース危うしとも思えるが、リスグラシューとは父ハーツクライという共通点がある。覚醒のタイミングもともに5歳秋であり、目覚めたハーツクライ産駒を止めるのは簡単ではない。 なによりデータでも触れたが、今年はドウデュースの対抗格が見当たらない。ジャパンC、天皇賞(秋)と2着馬がおらず、天皇賞(秋)3着馬は除外対象。正直、逆転を託したくなる、魅力ある馬がいない。ドウデュース以外、直近2走で勝利をあげたのはアーバンシック、ダノンデサイルとスタニングローズ、ハヤヤッコの4頭のほか、除外対象のアラタとメイショウタバルのみ。候補はこの中か。 最後に前走海外遠征組について確認する。1986年以降での成績は【2-3-2-14】。上記リスグラシューのほかにオルフェーヴルが勝利を飾った。2、3着の5頭は、タップダンスシチー、ポップロック、ゴールドシップ、ディープボンド、クロノジェネシス。ディープボンド以外はすべて5歳以上で、ポップロックを除くとすべてGⅠ馬だった。 「前走海外」、「5歳以上」、「GⅠ馬」。この3つに該当するのはドウデュースより一つ上の世代のダービー馬シャフリヤール。昨年は香港ヴァーズの出走取消から急転しての臨戦で5着。同じローテーションでも昨年とは中間の調整過程がまるで違う。ドウデュースが成せなかったダービー馬による海外GⅠ制覇を成し遂げており、決して舐めてはいけない一頭だ。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
勝木 淳