異国の店主と土地の味/スペイン料理店『フォンダ サン ジョルディ』
各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の外国料理店の店主を、 料理家の土井光さんと巡るコラム。
土井光(以下、土井) ジョルディさんはスペインご出身ということですが、地域はどこですか? ガストロノミーを経験されているのもあり、一品一品とてもスタイリッシュ。ただ素朴で優しいスペインの家庭料理の要素も入っているのでとても食べやすい。パスタのパエリアはカリカリとした食感がお米以上に際立つのでお酒にも良く合います。
ウリベ・ジョルディ(以下、ジョルディ) スペイン北東部にあるカタルーニャ地方のジローナ県というところです。バルセロナから車で大体1時間くらいの場所。
土井 カタルーニャ地方ですと、サン・ポル・ダ・マールという海辺の小さな村に何度か遊びに行ったことがあります。村には、ミシュラン3つ星の『レストラン サンパウ』(※2018年に閉店)があって、そこに知り合いの料理人がいたのでフランス留学中によく会いに行ってたんです。『レストラン サンパウ』は2004年から東京にも出店していたんですけど(※2023年に閉店)、イベリコ豚のヒレステーキや、カルメシェフの特徴的なミナルディーズ(食後に楽しむ小さなスイーツ)など、当時の日本にはなかった新鮮なお料理で溢れていましたね。美しく、そして美味しい! って感動しちゃいました。
ジョルディ サン・ポル・ダ・マールと私の実家は、車で20分くらいの距離ですよ! しかも、私は来日してからしばらくの間、東京の『レストラン サンパウ』にいたんですよ! 東京店がオープンして数ヶ月経ってから、料理専門学校のときの同級生の紹介で働けることになって。ちょうど20年前ですね。
土井 すごい、一気に話が繋がりましたね! 厨房でのコミュニケーションはスペイン語と日本語どちらでした?
ジョルディ 基本は日本語。日本語学校も行かなかったから、どうにか働きながら覚えていきました。あと、スペインにいる時に結婚した奥さんが日本人なので、とても助けてもらいました。今でも、書類などは手伝ってくれて、奥さんがいなかったら日本での生活も自分のお店も絶対できなかっただろうなって思います。
土井 奥様に対する感謝の気持ちがとてもよく伝わってきます。『レストラン サンパウ』で働いた後に、独立されたんですか?
ジョルディ 独立はもう少し後。『ティオ・ダンジョウ』や千葉県浦安市にある『ラ・ピカーダ・デ・トレス』など、お店を持つまでにいくつかのスペイン料理店でシェフを務めました。『ティオ・ダンジョウ』は、今私がお店をしているこの場所にあったのですが、調布に移転するタイミングで物件を引き継がせてもらって、2014年に『フォンダ サン ジョルディ』をオープンしました。