きっと歩きたくなる。自然歩きのプロが選んだ8つの道
教えてくれた人
若菜晃子さん(わかな・あきこ)/編集者。『山と溪谷』の副編集長を経て、現在はフリーとして活動。著書『東京近郊ミニハイク』では、自然歩きを優しく説く。
上高地・涸沢コース
・所要時間:12時間+休憩 ・ルート:上高地バスターミナル ⇆ 明神分岐⇆ 徳沢 ⇆ 横尾 ⇆ 本谷橋 ⇆ 涸沢カール ゴール地点の〈涸沢ヒュッテ〉に泊まるのが好ましいが、日帰りの場合は朝5時台にバス停を出発するのがベター。順調に行けば、15時までに戻れる。 * 涸沢は北穂高岳、奥穂高岳、前穂高岳に囲まれた日本を代表する氷河地形。夏でも雪が残り、秋には一面の紅葉が山を彩ります。穂高の山々に登るのは難しいという方でも、涸沢までは比較的なだらかな道が続き、荘厳な景色を望むことができます。 スタート地点のバスターミナルから白樺の美しい姿が立ち並ぶ徳沢や横尾大橋くらいまでは週末ハイキングのような雰囲気が続きますが、本谷橋を過ぎた辺りから山行感が増してくる。その風景の移り変わりもこのルートの魅力。 そして、フィナーレとなる涸沢カールではダイナミックな景色が待っている。長時間歩き続けたからこそ、より感覚が研ぎ澄まされて、その悠久の景色を五感をフルに使って味わうことができるはずです。
教えてくれた人
成瀬洋平さん(なるせ・ようへい)/画家。岐阜県生まれ。山で体験したことを絵と文章で素敵に描く。いつか歩いてみたい自然路は、ジョン・ミュアー・トレイル。
北九州・平尾台コース
・所要時間:3.5時間+休憩 ・ルート:吹上峠 → 大平山→四方台 → 貫山 → 四方台 → 吹上峠 吹上峠駐車場の道路を挟んだ向かい側にある、吹上峠登山口がスタート。距離はおよそ7.5km。累積標高は450mと緩やかなコースで、気持ちよく歩ける。 * 日本3大カルストとして知られている平尾台エリアの吹上峠を起点に、貫山までを往復しながら平尾台をぐるりとラウンドする人気のハイキングコース。 福岡県北東部に位置する平尾台は、最高峰の貫山(710m)をはじめ周辺には300m~600mほどの山が点在するカルスト台地で、北九州国定公園にも指定されています。コースは平尾台名物の石灰岩(ピナクル)がゴロゴロと散らばる羊群原を眺めながら歩く、緩やかな稜線。 緑色の草原に一本続くトレイルは思わず走り出したくなります。草原にたくさんの羊が群れているように見える石灰岩が映えるのは春ですが、緑からススキの草原に姿を変える秋もおすすめ。平尾台は日差しを遮るところがないため、気温の高い日はしっかりと水分の準備を忘れずに。
教えてくれた人
鬼塚智徳さん(おにづか・とものり)/トレイルランナー。福岡県出身。実業団の九電工を経て、トレイルランナーに。現在は100マイルレース中心に挑戦し、2022年UTMFでは4位入賞。
取材・文/黒澤祐美、豊田耕志(初出『Tarzan』No.843・2022年10月6日発売)