チャットボットの性別として正しいのは女性か、男性か、ノンバイナリーか?ある実験が導き出した結論
■ 現実に多いのは「オム・ファタール」だった ファム・ファタールの男性版のことを「オム・ファタール(homme fatale)」と言う。「オム」はフランス語で文字通り「男性」の意味だ。フィクションの中では圧倒的にファム・ファタールが描かれることが多いが、オム・ファタールが存在しないわけではなく、たとえば『源氏物語』の光源氏をその一例として挙げる人もいる。 そして、今回の実験で確認されたのは、現実はフィクションの逆、少なくともAIをめぐってはオム・ファタールの方が多いという傾向だった。 まずAIがパートナーとなった場合の全体的な傾向として、「女性」として提示されたAIに対して、人間のプレイヤーが協力的になるという結果が見られた。プレイヤーが協力の選択肢を選んだ割合は、「女性AI」で約55%、「男性AI」で約40%、「ノンバイナリー」あるいは「性別不明」で約48~50%だった。 動機の面も含めた傾向で言うと、プレイヤーは「女性」と表示されたAIに対して、「相互利益型協力」(お互いが協力することを期待して協力する)を選ぶケースが多く見られた。一方で「男性」と表示されたAIに対しては、「相互裏切り」(パートナーが裏切ると予想して裏切る)が発生する傾向が見られたそうだ。 しかしこの傾向は、人間の実験参加者が男性の場合と女性の場合で大きく異なる。 生身の人間の男性がプレイヤーだった場合、「女性」と表示されたAIに対して協力を選んだ割合は約44%だった。逆に約56%で「裏切り」が発生したわけだが、その中で「搾取」(パートナーが協力すると予想しつつ、自分だけ利益を得るために裏切る)のケースだったのは、約43%だったそうである。 これは他のケースと比較した場合に高い数値で、実際に「搾取」の発生率は、男性参加者が女性AIをパートナーとした場合にもっとも高くなったそうだ。 比較のために、男性のプレイヤーが人間の女性をパートナーとした場合の結果も記しておこう。この場合、協力率は約54%と、AIよりも約10ポイント上回った。さらに裏切りが選択された際、それが搾取だったケースの割合は、約27%と低い値に留まった。 また女性のプレイヤーが男性AIを相手にした場合、協力率は約40%で、裏切りの中で搾取が発生した割合は約35%だった。同じく女性のプレイヤーが人間の男性をパートナーとした場合、協力率は約38%で、裏切りの際の搾取率は約32%だった。 女性の場合はAIかどうかを問わず、男性に対しては不信感を抱いて、裏切られる恐れから裏切ることが多かったと言えるだろう。 要するに、人間の男性は女性AIを相手にした場合、相手の協力的な姿勢を利用して自分が得をしてやろうとする傾向が強かったのである。現実に多いのはマキナ・ファタールではなくオム・ファタール、というわけだ。