反則タックル出場停止処分を経て2年ぶり公式戦で圧勝再出発した日大アメフット部の何がどう変わったか?
試合前のミーティングで橋詰監督はこう呼びかけた。 「正しいフットボール、日本一のフットボールをやろうと、作ってきたんやから、その通りやれば圧勝できるはずや」 1部下位リーグ「ビッグ8」に降格した今シーズンは甲子園ボウルへの道はない。「ビッグ8」で2位以内に入れば、12月14、15日に「トップ8」の7、8位チームとのチャレンジマッチ(入れ替え戦)への出場権を得て、勝てば昇格を決めることができるが、今シーズンの試合は、そこまで。4年生には日本一奪回のチャンスはないのだ。 だから、橋詰監督は「私はカリスマ監督ではないので、何も言わない。彼ら次第なんです」と前置きしながらも、こんな目標を掲げた。 「私は“今年優勝するんだ”と言っています。そこでは今年は戦えないんだけど、“甲子園ボウル、ライスボウルに出ても勝てる、そういうチームを作りたい”と言っています」 この日のゲームでは大きなゴールへ向かってたくさんのことを試した。 「同じコール(作戦)はひとつもなかったのと違いますかね」 橋詰監督は、日大伝統のショットガンフォーメーションからパスとランをバランスよく絡めるオフェンスを徹底した。点差が開いてからは、他のQBを2人使い、オフェンス、ディフェンスのユニットを入れ替えながら経験も積ませた。 橋詰監督は、日大OBではなく立命大OB。オクラホマ大で戦術を学び、立命大でオフェンスコーチを務めライスボウルを制した。その立命大と日大ではフットボールの文化が違った。 「7、8時間の猛練習でプレーをつきつめてきたチームと、プレーブック(戦術)を渡して理解するフットボールの違い」(橋詰監督)だ。前者が日大で後者が立命大。 「自分らで違うと思ったら別のことをやる(笑)。でも成功してもプレーブックのプレーでなければ注意されるのが僕のスタイル。だから互いに戸惑いがあった。1年半でようやく。まだまだですが」 融合に時間はかかっているが、新生フェニックスには、戦術、戦略的にも、また違ったチームへ生まれ変わりそうな期待感がある。 キャプテンの贄田も、その橋詰監督の指導を受け止めこう言う。 「監督は自由な人です。自発的に選手が動くフットボールをしたいのがわかります。監督と考えは合致しています。目標は来年の日本一。そのために今季は最低全勝。僕ら4年生のできるベストがチャレンジマッチに勝ってチームをトップ8に上げること。でもそこはスタートなんです。どんどん前へ。遠いゴールへ成長を続けたいんです」 3年生の林は「来年日本一」の目標を引き継ぎ遂げるチャンスがある。 「日本一になるためには取り組み、私生活、すべてが日本一ならないと日本一なれない。日本一の練習、日本一アメフトを考えること。それに取り組んでいる」 伝統と改革。 試練を経て、2年ぶりに表舞台で動き始めた新生フェニックスの戦いは12月1日の「ビッグ8」最終戦、そして「トップ8」の下位チームとの入れ替え戦へと続く。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)