ヤングなでしこが3大会連続のW杯ファイナリストへ! ビッグクラブも熱視線を送る“登竜門”をくぐる新ヒロインたち
個性が融合したピッチ上の強み
オンザピッチの強みは、個々の強みがしっかりと融合し、攻守が噛み合っていることだ。狩野監督がチームの最大の武器として挙げる「シンキングスピードの速さ、予測、判断」を、初戦から発揮。守備はボールの「即時奪回」を徹底し、柔軟に攻め手を変えながらペナルティエリア内に複数人がなだれ込む。 6試合で放ったシュート数は「120」に上り、エリア内のシュート数「78本」と枠内シュート数「49本」は出場国中トップを記録。6試合で8人がゴールを決めていることも、攻撃パターンの多さを裏付ける。 「誰が出ても同じような戦い方ができているのは、トレーニングを通して共通認識を持ってやってきたことを今大会で生かせているからだと思います」 早間美空が言うように、コンビネーションが安定しているのは選手層の厚さも理由だろう。狩野監督は毎試合、交代枠をフル活用している。 チームの軸は、前回大会にも飛び級で出場していた松窪真心、大山愛笑、天野紗、土方麻椰、小山史乃観、林愛花の6人。土方と大山を除く4人はすでにヨーロッパやアメリカのクラブに籍を置いている。なでしこジャパンも含め、さまざまな世代の代表を経験してきた小山は、このチームの強みをこう分析する。 「自分たちの世代は泥臭い気持ちで戦っている選手が多くて、最後は足が攣ってでも走り切ろうという気持ちがあります。スペイン戦の延長戦の後半でも全員が声を掛け合ってチームのために走ることができていたので、それが最後まで走り切るエネルギーになっています」 替えの利かない選手を挙げるなら、小山と大山のダブルボランチだ。小山は160cm、大山は158cmだが、ともに相手に捕まらないポジショニングを心得ており、攻撃の起点となっている。 「相手に先に触られると自分のプレーができないので、いかに早くスペースを認知して自分のポジションを取るかを考え、それができている手応えがあります」 小山は、今年1月にスウェーデン1部のユールゴーデンIFに加入してから、1対1にめっぽう強くなった。 相方の大山は前回大会でも日本の司令塔を担ったが、針の穴を通すような一撃必殺のパスの精度がさらに上がった。120分間の激闘の末にスペインを下した試合も、2人の絶妙なバランスで、中盤の主導権を渡さなかったことが大きい。 そしてもう一人、直近の2試合で決定的な働きをしたのが背番号10を背負う松窪だ。昨年からアメリカのNWSLに挑戦の場を移し、「毎日、自分の全力を出し切れる環境がある」という環境で筋力や俊敏性が向上。今大会はチーム事情でチームへの合流が遅れ、高地への適応に苦しんだが、スペイン戦では本領を発揮した。鋭い出足の守備でスペインのビルドアップを狂わせ、オランダ戦は2得点で決勝進出の立役者になった。最後まで足を止めないアグレッシブなプレーも魅力だが、ナイジェリア戦ではスーパーセーブを見せた相手GKに笑顔でグータッチするなど、リスペクトを忘れない立ち振る舞いにも注目が集まった。 上記に挙げた3人以外にも、各ポジションに“飛び道具”を持ったアタッカーが多く、個性が輝いている。質の高い動き出しでゴールを狙う土方、数的不利でも相手をかわせるドリブラーの松永未夢や笹井一愛、正確なキックで決定機に絡める天野紗。無尽蔵のスタミナで”ポスト清水梨紗”とも言われる柏村菜那、左足の強烈なキックでゴールを狙う佐々木里緒と早間。高さと強さを兼備した白垣うのと米田博美のセンターバックコンビに、絶対的守護神のGK大熊茜。誰がヒロインになっても驚きはない。