北鎌倉・六国見山の麓で、知られざる異空間の切通しに出合う
住宅地を抜けて六国見山へ
さてここから六国見山へは、一度住宅地に下って登り返すことになるが、住宅地にはあまり道標がないので少々わかりづらい。しばらくは地図とにらめっこである。北鎌倉駅方面からの道に出て右折し、緩やかなカーブの分岐を左に曲がって急な道をがんばり、車道終点から山道に入る。この入り口は、足もとの小さな標識がなければ、確実に迷うようなポイントだ。 しばらくすると六国見山の山頂だが、ピークという雰囲気は皆無。小さな標識が足元に置かれているだけなので、気づかずに通り過ぎてしまいそうだ。 さらに進み、稚児の墓を過ぎて展望広場に到着。ベンチがあり海の眺めがよいので、少しゆっくりしていきたいところだ。
六国見山の麓にある異空間。知られざる切通しへ
展望を満喫した後は、北鎌倉駅に向かわず北へ下り、高野台(たかのだい)バス停のあるロータリーに出る。ここからバスで大船駅まで向かってもよいのだが、さらに歩を進めてみたい。 大船高校の北側をぐるりと巻いて、階段を降りた所にある道標から山道に入る。緩やかに下っていくと、次第に両側に岩肌が迫る切通しとなる。高さはあまりないものの、切通しの道は、通常の山道とはなにか空気が違う。 下りきると、削られた跡が荒々しい小さな隧道の脇の車道に飛び出す。思えば、この隧道の上を歩いてきたので、隧道と切通しとが立体交差となっているわけだ。切通しと隧道は同時期に作られたものではないと思うが、その技術と叡智に驚かされる。 帰路はここから大船駅まで徒歩20分ほどだが、すぐそばには熊野神社と多聞院があるので参拝していくのもよいだろう。
ところで、今回の自然探索はこれで終わりではない。付近にもう1カ所切通しがあるので、こちらについても触れてみたい。 鎌倉市の「かまくら景観百選」にも選ばれている「高野の切通」である。多聞院から南西に歩いて10分ほどなのだが、特に道標はないため、町歩きのルートファインディングが必要で、再び地図とにらめっこ。 住宅地の奥、高野公園の脇から入ると、突如として切通しが現われる。先ほどの切通しよりも高さがあり、なかなかの規模で、そこはもう異空間。よく知られている鎌倉七口(かまくらななくち)に含まれていないが、これほどの切通しが存在していたことに、素直に驚いた。