実は謎が多い水星 探査機「みお」と「MPO」が挑む“宿題”
この話は、水を持つ惑星があるかどうかを調べるときも重要です。現在4000個程度の太陽系外惑星が発見されており、そのうち50個程度が地球のように液体の水を持つ可能性があります。しかし、見つかっている系外惑星の多くは、太陽よりも暗い恒星を周回しています。ということは、液体の水が存在する領域(ハビタブルゾーン)は、中心の星(恒星)に近いところになり、そこにある惑星は、中心の星からくる恒星風(プラズマの流れ、太陽風の恒星版)の影響を大きく受けます。それに加え、小さくて暗い恒星ほど、活発に恒星風を放出する傾向にあります。 暗い恒星のハビタブルゾーンの中にある惑星が本当に水や大気を持つのかを議論するためには、中心の星からの距離だけではなく、磁場の有無、そして恒星風が磁気圏に与える影響を知る必要があります。 まずは、太陽系の中で、太陽風の影響を強く受ける水星の磁気圏で何が起こっているのか、どれだけの大気が逃げているのか、検証材料を増やさないと、暗い恒星のハビタブルゾーンに液体の水が存在するのか、先の議論へ進むことができません。
「最後のフロンティア」への挑戦
水星を通して、地球、そして惑星全般について知りたい――。今回の計画には、水星探査機「みお」や「MPO」の開発に携わった技術者・研究者の熱い思いが込められています。プロジェクト・サイエンティストを務める宇宙航空研究開発機構の村上豪氏は、「BepiColombo計画は、時間がかかっているミッション。だけどサイエンスとしても、そして日本の宇宙科学としても国際協力と日本の得意技(磁気圏探査)を活かすという点で重要なミッションになる。絶対に成功させたい。」と語っています。太陽系最後のフロンティア「水星」に到達できるのは7年後。どんな宝物を持ち帰ってくるのでしょうか。期待に胸を膨らませながら待ちましょう。
《参考文献》 ・宮本英昭・平田成・杉田精司・橘省吾(2008)『惑星地質学』東京大学出版会. ・水星磁気圏探査機「みお」(MMO) 特設サイト(ファン!ファン!JAXA!) ・ファン!ファン!JAXA!水星磁気圏探査機MMOに関する説明会 ・BepiColombo 水星探査計画(JAXA) ・BepiColombo (ESA) ・Messenger (NASA) ・Messenger (The Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory LLC.) ・The Extrasolar Planets Encyclopaedia ・Habitable Exoplanets Catalog (Planetary Habitability Laboratory,The University of Puerto Rico at Arecibo)
◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 渡邉吉康(わたなべ・よしやす) 1986年、新潟県生まれ。幼少時に個性豊かな惑星の画像に魅せられたことをきっかけに、惑星科学の道へ。大学院では生命の住める惑星の条件について研究。2016年4月より現職